ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「……ありがとな、ソニヤ。そんなことを言ってくれたのは、お前が初めてだよ」
 
俺は軽く笑みを浮かべて、ソニヤの髪を優しくそっと撫でる。

「ムーンは……今一人なんですか?」

「いや、一人じゃないさ。今は結構賑やかな奴らと一緒で、仕事だってちゃんとしている」
 
俺の言葉にソニヤはホッとした表情を浮かべた。

しかし直ぐに、暗い表情を浮かべると視線を下に投げる。その姿に俺はソニヤの手を優しく取って言う。

「今のソニヤは一人ぼっちかもしれないけど、いつか必ず一人じゃなくなる日がくる」

「……何でそう言い切れるんですか?」

「俺がそうだからだ」
 
こんな俺でも、テトやアレスたちに出会う事が出来たんだ。

だからソニヤもいつか、良い人たちに出会えると、そんな気がしているんだ。

「あと四年もすれば、お前も立派な狼人族の仲間入りだ。それでもしも、四年の間に誰とも出会えず、ずっと一人ぼっちだったなら、俺を探しに来ればいい」

「……良いんですか?」

「ああ、構わない。でも俺は信じているんだ。お前なら、大丈夫だって」

「……ムーン」
 
ソニヤの目尻にたまる涙を拭い、俺は彼女の体を抱き上げる。

「さあ、村の入口まであと少しだ」
 
そう言って俺はここから見える村の入口に向かって歩き出す。

「あ、あの……ムーン」

「なんだ?」

「次に会った時は、本当の名前を教えてくれますか?」

「……良いよ。約束だ」
 
俺の言葉にソニヤは嬉しそうに微笑んだ。

その笑顔を浮かべる彼女の姿を、少しだけ可愛いと思いながら、村の入口付近まで来たところで、俺はソニヤを下ろした。