ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「なぜお前たちがそう大人数で、この子を確実に仕留めようとしているのかは知らない。元狼人族の俺には関係のない話だからな。でも……」
 
俺は右腕を構えて変形させ、今直ぐにでも兎人族たちに襲い掛かる準備を整えた。そして目を細めて低い声で言い放つ。

「この子を殺すって言うなら、俺は今この場でお前たちを殺しに掛かる」
 
その言葉に剣を構えていた兎人族たちは後退った。

しかし右目に傷を持つ兎人族は、一歩前に出るとそのまま俺の前まで歩いて来る。そんな兎人族の様子を伺っていると。

「分かった。その子は殺さないとしよう」
 
と、男はそう言ったのだった。
 
驚いた俺は目を見開いて、構えていた右腕を下ろして問いかける。

「このまま見逃すっていうのか?」

「ああ、その通りだ。確かに俺たち大人がたかがこんな子供相手に、こんな大人数で来るものでもなかったしな。少々大人気ないと思っているところだ」
 
兎人族は苦笑すると軽く左手を上げる。その左手を見た他の兎人族たちは、それぞれ渋々と剣を鞘にしまうと森の奥へと帰って行く。
 
右目に傷を持った男も、俺の直ぐ近くで気絶してしまっている兎人族を抱き抱えた。

「どうやらお前は他の狼人族と違って、話が出来る奴のようだな。元狼人族でありながらも、仲間を助けるなんて」

「……」
 
兎人族の言葉に俺は何も言わず視線を逸した。
 
別に助けたくて助けたわけじゃない。ただ、放っておけなかっただけだ。

「言い忘れていたが、俺はブラウドって言うんだ。まあ、また今度会ったらゆっくりと互いについて話そうじゃないか」