ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「わ、私は……両親を殺した人を探しに来ただけです!」

「っ!」
 
その言葉に母上が殺された記憶が脳裏を過った俺は、前に出かかるのを必死に堪えた。
 
まさか……あいつはそのためだけに、誰にも内緒で村を出てこんなところまで来たと言うのか?! 

今は縄張りを争ってそれぞれの種族が戦争をしているってことを、子供だって知っていてもおかしくないはずだ! 

それなのに、自らの命を危険に晒す真似をするなんて……馬鹿だろ!

「だからそれを見過ごす事が出来ないんだ! お前みたいな子供がそんなこと知って、いったいどうするって言うんだ?」

「そ、それは……」
 
兎人族の内の一人、おそらくこの中ではリーダー的位置に居る、右目に傷のある兎人族が少女にそう問いかけた。

確かにあいつの言う通り、子供がそんな事を知ってどうすると言うんだ? 

そんな理由知ったところで、自分が傷つくだけだと言うのに。

まさ敵討ちにでも行くつもりなのか?

「兄貴〜そろそろ殺っちゃいやしょうぜ」
 
そう言って兎人族の一人が少女の前に立って剣を構えた。

「ひぃ!」

その光景を見た俺は、思いきり足を踏み込んでその男の元へと走って行く。

そして少女に向かって振り下ろされた剣を、俺は爪を変形させて止めに入った。

「なっ!」
 
突然、目に前に知らない男の存在がある事に驚いた兎人族は、焦って柄から手を放しそのまま後ろへと後退した。

「だ、誰だお前?!」
 
俺は手の中にある刀身を力を込めて破壊し、黄緑色の瞳を細めた。

「こいつと同じ狼人族だ」
 
その言葉に右目に傷を持つ兎人族は目を見張った。

しかし周りに居る奴らは、俺が狼人族だと知るとそれぞれ剣を抜き構え始める。