ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

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声がしました。

ずっと温かい光の中で眠っていた時、突然その声は降ってきたのです。

「あんたが【光の巫女】か?」
 
懐かし呼び名を聞いて、閉じていた黄金の瞳を開いた時、彼は目の前に居たのです。

最初はその姿を見た時は驚いたのですか、わたくしは直ぐに。

「あらあら、まあまあ! ここに人が来るなんて初めてなのですよ」
 
久しぶりに人と話す事が嬉しかったわたくしは、彼の存在を怪しむどころか、心から受け入れたのです。

それに彼は一目見て、悪い人ではないと判断しました。

「俺の事を怪しまないのか?」

「いいえ、怪しみませんよ? だってあなたの側に居る二人を見れば、あなたが悪い人ではないと分かるのですから」
 
そう言ってわたくしはニコニコと微笑んだ。
 
すると彼は私の言葉に苦笑すると、直ぐに真剣な表情を浮かべた。

その顔を見たわたくしも、軽く目を細めたのです。

「単刀直入に言わせてもらう。あんたの力が必要だ」

「それはどういった事のでしょうか? あなたがわたくしの主になるのは無理だと思うのです?」

「安心しろ。お前の主は既に目星をつけてある」
 
彼の言葉にわたくしは軽く目を見張りました。
 
「黒い粒子」

「っ!」
 
その言葉にわたくしの肩がピクリと上がった。

「今、外で黒い粒子がこの世界に進行して来ている。それを浄化するためにも、お前の光の力が必要なんだ」

「……そうですか」
 
黒い粒子……。

どうしてまたそんな物が、この世界へやってきたと言うのでしょうか? 

あの黒い粒子はエーデルとラグの浄化の力を使って、完全に浄化しきったはずです。
 
まさか……浄化しきれなかったと言うのですか?

「おそらくここに居たエーデルは誰よりも、この世界に黒い粒子がやって来ると知っていた。それを自分の力を使って抑えていたんだと思う」

「エーデルは?」
 
わたくしの言葉に彼は頭を左右に振った。
 
どうやら彼女にも……限界がきてしまったのですね。

「分かりました」
 
座っていたわたくしは立ち上がって、そのまま彼の側へと寄った。

「その黒い粒子はなんとかします。わたくしを主の元へ連れて行って下さい」

「ああ、任せろ!」
 
彼はそう言うとわたくしへと手伸ばす。

その手を見つめ躊躇わず彼の手を取った時、彼から懐かしい魔力の波動を感じたんのです。

「あなたは……まさか」

「ふっ。俺はただの旅人さ」

「……ふふ」
 
彼の言葉にわたくしは軽い笑みをこぼした。