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「はあ……はあ……」
 
サファイアの氷結の力を開放し、黒い粒子の侵食を防ぐために、永久凍土の魔法を開放した。その魔法を途切れさせまいと、私は何とか意識を保とうとしていた。
 
しかし永久凍土の魔法は、思ったよりも魔力を持っていかれる。

それに私の両腕も、氷結の力を使った事による反動によって凍りついてしまっている。

このまま氷の中に閉じ込められるんじゃないかと思ってしまったが、ここで魔法の発動を止めるわけには行かない。

今は少しでも長く、黒い粒子の侵食を防がないといけないんだ。

『カレン……本当に大丈夫なのか?!』

「……だい、じょうぶです」
 
額に血管が浮かび上がりドクドクと脈を打っている。両目から血の涙が流れ頬を伝っていく。

『このまま氷結の力を使い続けたら、お前の身が保たないんだ! もう十分時間は稼げたはずだ、後はあいつに任せて』

「嫌です!」
 
私はサファイアにそう力強く叫んだ。

「私は……みんなを守りたい。先生の役に立ちたい! それが叶うなら、この身がどうなろうとも関係ないです!」

『カレン……』
 
本当はもうとっくに体に限界は来ていた。

氷ついてしまっている両腕も既に感覚がなくなっていた。

でも、ここでやめるわけにはいかない。

今ここでやめてしまったら、私は絶対に後悔してしまう!

「ぐっ!!」
 
その時、私の体に激しい痛みが走った。

「がはっ!!」

『カレン! もうやめろ!』

「…いや、です!」
 
口の箸から血が流れ、体のところどころから血が吹き出し始める。視界も徐々に歪んできて、意識が遠くなっていく。
 
そんな私にとどめを刺すように体全身に激痛が走った時、目の中から光が失われた。

『カレン!』
 
手の中から柄が離れ体は後ろに倒れ込んでいく。

するとサファイアは人間の姿に戻ると私の体に手を伸ばした。

その手を握ろうとしたがもう体に力が入らなかった。
 
ああ、このまま私は死ぬんだ。

そんな考えがふと頭を過った時、私の体を誰かが支えてくれた。

「……っ」
 
その拍子に見覚えのあるフードがなびき、私の目に金髪の髪が映った。

「……ロキ?」
 
ゆっくりと顔を上げるとそこには、懐かしい人の顔があった。

その姿を見たら涙が零れて、私は縋り付くように叫んだ。

「お願い……します。……みんなを……助けてください……先生!」
 
その言葉に頷いてくれた先生を見て、安心した私は意識を手放した。