アレスたちと別れた私は、村に居る人たちに遺跡へ向かうように呼びかけるため、村に向かって飛んでいた。

そして村の頭上に到着し、そのまま村の真ん中へと下り立った。

「……っ」
　
村の中は悲惨な状況だった。

自我を失った同方によって殺し合いが始まり、今私の目の前には血を流して倒れている民たちがたくさんいた。
　
私はその中で直ぐ近くで倒れている者の側に寄った。

「大丈夫ですか！　しっかりして下さい！」
　
そう言って体を抱き起こした時、私は抱き起こした者の体が冷たくなっている事に気がついた。

「……っ！」
　
既に死んでいると悟った私は、ゆっくりと体を寝かせる。

「……どうして」
　
怒りで体を震わせながら、私へと向かって来ている同方を睨みつけた。

「どうして仲間どうして殺し合うんですか！」

「うがうああああ！！！」
　
私へと襲い掛かってきた仲間を、私は剣を使って気絶させる。

「……いったい、どうしてこんなことに！」
　
私はエーデルから民を任されたのに……。

巫女としてみんなを守らないといけなかったのに……。

「……ごめんなさい」
　
そう小さく呟いた時だった。

「……姉上？」

「っ！」
　
左の森の中から聞き覚えのある声が聞こえ、私は直ぐに森の方へ視線を送った。

そこには生き残った民たちが一箇所に集まって身を隠していた。
　
その中心にいる人物を見て、私は慌てて駆け寄った。

「リュシオル！　帰って来たのですか！」
　
一週間村を離れていた私の弟、リュシオルが左手に剣を持ちながら、民たちを守ってくれていた。

リュシオル以外にも空には竜騎士(ドラグナー)たちが飛んでいる。

「ただいま戻りました、姉上。しかし、これは一体どういう事なのですか？」
　
リュシオルは灰色の瞳を細めると村の中を見渡した。

「……分からないのです」

「姉上？」

「突然……東の森が黒くなり始めたのです。そうしたら、村の人々が次々と自我を失っていき仲間を襲いだしたのです」
　
私の話を聞いたリュシオルは、数秒考え込むと私の手を取った。