あの戦いから二日――
 
俺はソフィアが眠っている部屋に足を運んでいた。

部屋の中に入ると、テトの薬が効いて眠っているソフィアの姿があった。

その光景に安心し、彼女が寝ているベッドの側にある椅子に座った。
 
ソフィアの容態は幾らか落ち着いてきた。しかしまだ油断は出来なかった。

テトの薬で楽になれているとしても、彼女の体の傷はまだ癒えていない。
 
普段なら体の傷はとっくに直っているはずなんだけど、あの青髪の女性が魔人の力を封じ込めた事によりその反動せいか、傷の治りは遅くなっていた。
 
だから彼女はまだ目を覚まさない。体の熱だって引いていない。

「あら、居たのね」

すると部屋の空いた窓から、テトがひょこっと顔を覗かせた。そのまま軽やかに床に着地すると、俺の側まで歩いて来る。

「あなたの体は大丈夫なの?」

「ああ、ヨルンが作ってくれた薬のおかげで、霧の毒はすっかり消えたさ」
 
あの戦いの後、俺はソフィアの雫についてザハラに詳しく説明した。

一ヶ月前の世界の魔法の事件で、ソフィアの雫が器にされたこと。

そのせいで雫が不安定な状態になってしまい、魔力のコントロールが上手く出来ず直ぐに倒れてしまうこと。
 
その話を聞き終えたザハラは、酷く瞳を揺らしていた。

「まさか……ソフィアの体がそんなことになっていたとは」
 
知らなくて当然だ。彼女は知らなかったのだから。

「それだと言うのに私は……自分たちの悲願のために、ソフィアを無理矢理戦わせてしまった。そのために……あなた方を人質にとってしまって」
 
ザハラは体を震わせながら立ち上がると、俺に深々と頭を下げた。

「私の考えが愚かでした……。本当にごめんなさい!」

「ザハラ……」
 
深々と頭を下げる彼女の姿に、俺は目を逸してしまった。
 
今回の事はザハラのせいじゃない。

彼女は彼女で考えて行動を起こして、自分たちの悲願を果たすために動いただけだ。