はるか昔――
 
九種族戦争が行われていた時代で、魔人族に仕えていたとある種族があった。

彼らは魔人族に服従し、絶対の信頼を彼等に置いていた。

魔人族を守り、魔人族と共に戦う事が、我らの役目であり我らの誇りでもあった。
 
そんな中、魔人族たちを統率していた【魔人の姫】――エレノアは心から人間族(ヒューマン)を愛し、魔人族と人間族はいつか必ず分かり合えると信じていた。

もちろん我らもそう思っていたのだ。エレノア様がそう申したのだから……。
 
そしてついに人間族と魔人族との和平を結ぶ日が来た時、あいつらはエレノア様を裏切りあのお方を……殺したのだ。
 
我らは戦った。エレノア様の敵を取る為に。憎き人間族を滅ぼすために!

しかし我らは人間族に敗北し、身を隠す為にこの島へと移り渡って来たのだ。
 
我らが住む島――ラスールへ。
 
我らの使命はあの方から授かった者たちを守る事だった。

しかし我らはその使命を全うする事が出来なかった。

約束を果たせなかった。

だからこそ新たな魔人族を統率する者が現れた時、我らは再びこの力を振るうのだ。

もう二度と失わない為に。
 
その時が来るまで我らは血を繋げていかなければならない。

民を守らなければならないのだ。

「良いですか、ザハラ。これが我らの使命だ」

「はい、分かっております。【エーデル】」
 
我の名前を優しく呼ぶ少女――ザハラを我は見下ろす。

遺跡の天井から差し込む光が白い鱗を照らし、カーマイン色の瞳の中に我が子の姿を映す。