そのとき、ずっと黙っていた遠子がいきなりがばっと両手で顔を覆った。

「えっ、遠子、どうしたの?」

「嬉しい……」

へ? と間抜けな声をもらしてしまった。

わたしと天音が気まずくなっていることが嬉しい、と言っているのかと一瞬戸惑ってしまう。

でも、遠子が続けて言った言葉は、わたしの予想とは全く違うものだった。

「遥が悩みを私たちに話してくれて、頼ってくれたのが嬉しいの」

「え……」

思いも寄らない答えに、わたしは言葉を失う。でも、遠子の言葉に香奈と菜々美も大きく頷いた。

「分かる、ほんとそれ。遥がうちらに相談してくれるなんて、めちゃくちゃ嬉しいよね」

「遥っていつもにこにこしてて、嫌なことあっても笑って我慢するでしょ。絶対に弱音吐いたり愚痴言ったりもしないもんね。その遥が悩みごと打ち明けてくれたんだもん、嬉しいよ」

三人が温かい眼差しでわたしを見つめている。くすぐったくなってわたしは思わずうつむいた。

「てわけで、うちらは全面協力する気満々なわけよ」

そう言ってからからと笑った菜々美が、「その子はどこの高校なの?」と訊ねてきた。

天音が着ている制服から分かる学校名を答えると、「めっちゃ賢いじゃん」と目を丸くしてから言った。