「やりたかった仕事じゃないけど、せめて頑張ろうって決心して入社した。やっていくうちにだんだん面白くなってきて、上司にも認められて嬉しくて、これからはこの仕事を生き甲斐にしようって決めたの。この仕事を好きになれれば、私の人生の失敗はなかったことになると思ったのね。それでずっとがむしゃらにやってきたわ……」

でも、と続けたお母さんが、どこか自嘲的な笑みを浮かべた。

「最近ね、仕事がうまくいかなくて……。こんなに頑張ってるのに、どうして成果が出ないんだろうって、毎日毎日いらいらして……。だから、遥に当たっちゃってたのよね……」

お母さんはふふっと笑ってわたしを見ると、「ごめんね」と呟いた。

「勝手にあなたに理想を押しつけてたのよね。私は人生に失敗しちゃったから、遥には失敗して欲しくなかったの。悠は大学まで入ったからあとは頑張って卒業するだけでしょう。あとは遥を、ちゃんと自分がやり甲斐を感じられるような、自分に合った道を歩めるようにしてあげられたら、私の子育ても一段落かなって思ったの。だからあなたがなかなか進路を決められなくて、勉強も中途半端にしか集中できてないのが気になって。私の二の舞にさせちゃだめだって、焦ってたのよね」

お母さんがこんなふうに思っていたなんて全く知らなくて、びっくりした。

わたしが今までお母さんの話を表面的に聞き流して、ちゃんと向き合おうとしなかったから、こういう話をする機会がなかったのだ。

ただ、ひとつだけ気になることがあった。