二人してあんなに探り探りだったのに、よくもまあ、あんなに話が弾んだものだよね。


……伊波くんとのやりとりは、全部大切に保存してある。


初めの頃は、返信を待つ間も読んでいたし、返信を書くときも、何度も読み返してから書きもらしがないように注意して返事を打っていたから、お互いに何を言ったのか、ほとんど覚えてしまった。


ぎこちないやりとりは、読み返すと恥ずかしいくらい、当時の私の焦り具合が分かるアホな文章ばかりだけど。


それでも、一生懸命だったことは確かだ。


がっついているってことではなくて、ただ真剣に向き合って話をしようとしていた。


丁寧に丁寧に、それでいて冗談混じりに返信をくれる伊波さんとのやり取りは、少しでも気を抜いたら途端に失礼になってしまう気がして、私も丁寧に丁寧に返事を打った。


時間がかかって。

面倒臭くて。

……でも、伊波さんは何て返してくれるだろう、なんて期待して。


やり取りはとても遅々としてなかなか進まなかったけど、お互いに忙しいのは分かっていたから、どちらも急かさない。強要しない。


メールを打ったり読んだりする度に自然と背筋が伸びるのを、窮屈には感じなかった。力んでいなかったからかもしれない。


返事が遅れても、たとえその日のうちに返ってこなくても、ああ忙しかったんだな、無理させてないかな、なんて心配するくらいには、気楽なやり取りだったから。