爽やかな黒髪は短く、子どもみたいな丸い瞳。

手が大きく背もあたしより高いけど、威圧感はなく気安さがある。

あんまり男子って気がしないんだよね。



白いシャツに男女共通のえんじのネクタイ。

紺のブレザーとスラックスはなんの変哲もないもの。

すっかり寒くなった最近はグレーのコートとマフラーまで完備されている。



康一は変な個性のない、普通の男子。

接するのに気が楽でいいよね。

名前をのぞいて平凡なあたしと同じなんだ。



「なに?」

「ココア、一口飲む?」



そう言って彼は、手の中のココアの缶を見せてくる。

可愛らしいくまのイラストがパッケージのそれは熱そうで、きっと口にしたらあたたまるんだろう。

だけど……、



「いらない」



きっぱりと首を横に振る。

それを聞いていた涼華がなにを言っているの? と康一を笑った。



「ココはココアが嫌いでしょうが」

「あと、回し飲みも嫌いだよな」

「ねー。そんなのもう今さらなのに」



うっかりしてたのか? と康一が湖太郎にばかにされているのは、あたしのせい。

だけど、それを訂正もせず、彼はにこにこと笑みを浮かべたままだ。

あたしだって本当のことを告げるつもりはない。



「────ん! この新作のポッキー美味い!」

「えー! 1本ちょうだい!」



ぱくりと肉まんを食べ終えた涼華はもうあたしと康一のことなんて気にしていない。

わーわーと3人で盛り上がっていて、楽しそう。



その背中を見ながらため息を空気に落とす。

はあっと、くるくると回る。