康一と離れたいわけじゃない。
距離ができるなんていやだ。
近寄らないで欲しいんじゃなくて、そんなんじゃなくて、そうじゃなくて……!
反射のように、涙が浮かぶような感覚。
驚いた表情のまま、固まっている康一を見つめる。
あたしは康一をただの友だちだと思っていて、恋とは無縁だと思っていた。
だから告白されて、びっくりしてしまった。
気持ちもどうしたらいいかも、なにもわからなかった。
あたしは、あたしは康一との関係が変わることがこわかったんだ。
だってとても、大切だから。
だけど。
「……これ、返す」
彼の胸にココアを押しつける。
康一は黙って顔を歪めて、それを受け取った。
康一と話がしたい。
なんでもいいから言葉を交わして笑いあって、そばにいたい。
誰よりもずっとずっと。
あたしのあんたへの気持ちはきっと、もうわかっている。
だってあたし、あんたとならいいと思ったから。
息を吐く。
ぬくもりを吐き出すように、緊張を逃がすように。
康一をあたためてくれるように。
口角をゆっくりとあげて、あたしは言う。
ぎこちなく、だけど今できるとびきりの優しい表情で告げるんだ。
「ココア、一口ちょうだい」
fin.

