「さーてと。手当てしなくちゃね。暁、救急箱…」

「…」

布団の上に下ろされ、奏多さんが振り返ったときには暁さんは私の目の前にいて、無表情で見下ろされる。

「…っ!?」

「暁!?」

い、痛いっ!!

で、デコピンってこんなに痛かったっけ…。

額を押さえていると、顎を掴まれて強制的に顔をあげさせられる。暁さんは無表情のままだった。

「季龍さんが優しいからって図に乗るな。俺は許さねぇから」

「…」

「暁!」

「奏多さん、あんたが甘やかすなら、俺はこいつに優しくしない。それに、この怪我はこいつの自業自得だ」

暁さんの言葉が胸に刺さる。

そうだ。本当なら、昨日季龍さんが言っていたように売り飛ばされても仕方ない。

なのに、季龍さんは足を怪我した私を気遣ってくれて、わざわざ部屋まで送り届けてくれた。

普通なら、あり得ない。