「いや、ですが…」

「金ならある。文句があるのか」

「いいえ!滅相もございません。ですが、高額でのご落札ですので、私どもも謝礼を…」

「必要ない」

「それでは私どもの気が…」

なおも引き下がろうとしない男の胸ぐらを掴み、床に叩きつける。

一瞬のことに男は何が起こったのか理解せず、呆然と目を見開いていた。

「若」

「金だ。確かめろ」

差し出された小切手を未だに呆けた司会者の上に落とす。

拘束を解かれた女は、背後に立っていた男の腕に抱かれている。未だに意識を取り戻す気配はない。

「寄越せ」

「…出口まで」

「必要ない。こちらで運ぶ」

司会者の男と目を合わせた男が動こうとしたのを止める。

なおもいい下がろうとする男が口を開く前に、その腕から女を奪い取る。