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「醜い争いだな。あーあ、あの子気絶してるんじゃない?」

すぐ隣から聞こえてきた声は、退屈だというように大あくびをする。

この取引は裏社会の中でも、最も奥底にあると言ってもほどの売買だ。

今、ステージに立たされている女は、そんな取引のメインイベントだと称され、観衆は沸く。

誰も、手元に表示された女の情報には目も暮れない。暇潰しに端末を手に取り、さっき送信されたファイルを開く。


年齢:15歳
経歴:中学卒業
   有名財閥(匿名希望)奥方付き使用人
売却理由:跡取り息子への反発及び、外傷を与えたため


…使用人?15歳で…?

何年働いているかは知らないが、そんな若くして有名財閥の使用人になれるものなのか?

調べようとしても、それ以上の情報の記載はない。

この女、一体どうして…。

わずかな情報ファイルをじっと見つめていると、シワが刻まれた手が延びてくる。

「見せなさい」

優しさを含んだ声は、彼の肩書きには似合わないもの。顔を上げた先にいるのは、車イスに身を預けた御年70歳を迎えた男だ。

「どうぞ」

彼の膝に端末を置き、視線を前に戻す。

前のスクリーンには、現在の最高金額がでかでかと写し出され、ぽつぽつとその金額が上がる。

だが、時期に収拾がつくだろう。

視線を逸らしかけたとき、不意に表示された金額が飛び抜けた。