神様修行はじめます! 其の五

 初めてこちらの世界に来たときも、暑い夏の日だった。


 高層ビルみたいな巨大な鳥居や、空飛ぶ錦鯉に度胆を抜かれたよなぁ。


 ……フッ。あの頃はウブだったわね。あたしも。


「人生初の、アイデンティティーの崩壊だったよ。価値観が引っくり返ったもん」


「ボクも、一族と一緒にこっちに戻って来たときは目を回しました。ビックリし過ぎて突き抜けちゃって、逆に冷静になったの覚えてます」


「今じゃすっかり馴染んじゃったね、お互いに」


「そうですよね。亀の背中に乗って空まで飛んだし。ボク、もう大抵のことは笑って対応できる自信があります」


「ほんと、染まったよねぇ」


 一年前のあの日、見知らぬ異世界に飛び込んだあたしは、道場で門川君と再会した。


 ……衝撃的だった。

 本当に彼との出会いと再会は、あたしの人生を変えてしまうほどの、最大最高の衝撃的な出来事になった。


 それから色んな敵や仲間と出会い、戦い、別れを繰り返して、門川君に恋をして、惹かれ合うようになって。


 彼と共に生きていくことを決意して……


 いま、姿を消した彼をこうして追っているなんて。


 我ながら五つ星級の波乱万丈ライフを過ごしているけど、すべてそれは、門川君が隣にいてくれてこそなんだと、この場に立って改めて思い知る。


『そばにいれば、無敵』と固く誓い合った、あなたがいてこそ。


 だから、そのあなたがそばにいないのなら探しに行くよ。


 なんとしてでも、あたしが見つけ出す。


 この一年間ふたりで過ごしたすべてを賭けて、あなたの隣に駆けつけてみせるよ、門川君。


 そしてあなたの身に危険が迫っているのなら、あたしがこの手で守ってみせるから……!


「お待たせしましたわ、アマンダ」


「おお、たしかに結界が張られておじゃりますな。だが、どうぞ麻呂にお任せあれでおじゃりまする」


 ちょうどお岩さん組とマロさん組も到着して、あたし達全員、結界の壁の前にズラリと並んだ。