神様修行はじめます! 其の五

「小娘、しま子、小僧、そこで止まれ」


 あたしとしま子と凍雨くんが、その場でピタッとストップモーションした。


 気がつけば、いつの間にか人の行き来は途切れていて、あたしたち以外に人影は見当たらない。 


「ここからが結界場所じゃ。ここで典雅たちを待つぞ」


 じゃあ、どっかこの近くに宝物庫があるってことか。ずいぶん寂しい場所にあるんだね。


 人がいなくて静かで眺めは最高だけど、警護の人も見当たらないし、こんな手薄なセキュリティー対策で大丈夫なんかいな?


 そういえばあたし、こっちに来てもう一年にもなるけど、宝物庫には近づいたこともない。


 貴重品ばかりが収められている超重要な場所だから、よほど地位の高い人じゃなきゃ立ち入りできないらしいし。


 そもそもあたしにとってはそんなお宝なんて、縁も用もなかったし。


「あれ? でもこの場所って……」


 あたしは周囲をグルッと見回して、クッと首を傾げた。


 ここ、たしか初めてこっちの世界に来たときに、絹糸に案内された場所じゃないか?


 ほら、あの、朱塗りの欄干の太鼓橋。やっぱりここ、あのときの場所だ。


 えぇと、強力な結界が張られているらしいけど、どれどれ……?


 両目を細めてシゲシゲと確認すると、太鼓橋の手前当たりの空間が、薄っすら黄色く色付いてユラユラ歪んで見える。


 色つきの食品用ラップが、広範囲に及んでデーンと隔たっているカンジだ。


「あー、これ、やっぱり結界が張られてるね」


「触れるなよ? 触れた途端に精鋭部隊に取り囲まれるでな」


「でも前に来たときは、結界なんて張られてなかったよね? あたしたち普通に通ったじゃん?」


「通常ならば、結界は宝物庫だけに張られておるのだ。今は儀式中なので特別に範囲が広いのじゃよ」


「ふーん。それにしても懐かしいね」