「自分の地位や命よりも、大切な存在……?」
あたしの脳裏に、門川君の姿が浮かんだ。
……そうだよね。このクレーター頭さんだって、あたしと同じくらい今回の件を心配してるんだよね。
心配で、心配で、心配で、たまらないんだよね。
自分の命の危機も厭わないほどに、迎えに行きたい、会いたい、大切な人がいるんだよね……。
「小浮気の長よ、気持ちは分かるが……」
「いいじゃん絹糸。クレーターさんを連れてってあげようよ」
あたしの言葉に、絹糸が驚いた顔をする。
「小娘?」
「このままここに置いてきぼりにして、『お前は、ただ黙って待ち続けていろ』なんて可哀そうだよ」
「じゃが、この者の身に万が一のことがあれば、一族は大変なことになってしまう」
「それは、この人だって承知のうえでしょ?」
それに、この人の身になにかあっても、そのときはこの人の兄弟姉妹が一族の後を継ぐ。
たしかに突然の代替わりは混乱を招いて、一族にとっては大騒動になるけれど……
しょせん一族の長の存在なんて、いくらでも代わりのきく量産品の部品なんだ。
未練も容赦もなく首は挿げ替えられて、新しい勢力が実権を握り、やがて一族は何事も無かったように落ち着きを取り戻す。
それが、こちらの世界の掟だ。
そんな掟を百も承知のうえで、それでもこの人は、大切な人のいる場所へ駆けつけたいんだ。
「その覚悟があるなら、いいじゃん。ね、一緒に行こう。クレーターさん」
「滅火の娘よ……」
「いいよ、別にお礼なんてさ」
「そうではなくて、『クレーター』とは何なのだ?」
「……世の中には、知らなくていいこともあるんだよ。クレーターさん」
「むしょうに知りたい。いやむしろ、絶対に知るべきなような気がする」
「知らなくていいって別に!」
「やっぱりお前、なにか隠しているのだろう!?」
「しつこいよ! これ以上しつこくしたら、ピンセットで一本一本、手作業で丁寧に引っこ抜くよ!?」
「なにをだ!? なにを抜くのだ、えぇ!? ホラ言ってみろ! さあ言ってみろ!」
「すみませんが、話が決まったのなら一刻も早く移動したいと思うのですが、どなたも異存はございませんね?」
セバスチャンさんが冷静に突っ込んで、あたしとクレーターさんの間の一触即発の空気を救ってくれた。
ちょっと感動的なカンジになったと思ったのに、やっぱり『火』と『水』って相容れないぜ。チッ……。
あたしの脳裏に、門川君の姿が浮かんだ。
……そうだよね。このクレーター頭さんだって、あたしと同じくらい今回の件を心配してるんだよね。
心配で、心配で、心配で、たまらないんだよね。
自分の命の危機も厭わないほどに、迎えに行きたい、会いたい、大切な人がいるんだよね……。
「小浮気の長よ、気持ちは分かるが……」
「いいじゃん絹糸。クレーターさんを連れてってあげようよ」
あたしの言葉に、絹糸が驚いた顔をする。
「小娘?」
「このままここに置いてきぼりにして、『お前は、ただ黙って待ち続けていろ』なんて可哀そうだよ」
「じゃが、この者の身に万が一のことがあれば、一族は大変なことになってしまう」
「それは、この人だって承知のうえでしょ?」
それに、この人の身になにかあっても、そのときはこの人の兄弟姉妹が一族の後を継ぐ。
たしかに突然の代替わりは混乱を招いて、一族にとっては大騒動になるけれど……
しょせん一族の長の存在なんて、いくらでも代わりのきく量産品の部品なんだ。
未練も容赦もなく首は挿げ替えられて、新しい勢力が実権を握り、やがて一族は何事も無かったように落ち着きを取り戻す。
それが、こちらの世界の掟だ。
そんな掟を百も承知のうえで、それでもこの人は、大切な人のいる場所へ駆けつけたいんだ。
「その覚悟があるなら、いいじゃん。ね、一緒に行こう。クレーターさん」
「滅火の娘よ……」
「いいよ、別にお礼なんてさ」
「そうではなくて、『クレーター』とは何なのだ?」
「……世の中には、知らなくていいこともあるんだよ。クレーターさん」
「むしょうに知りたい。いやむしろ、絶対に知るべきなような気がする」
「知らなくていいって別に!」
「やっぱりお前、なにか隠しているのだろう!?」
「しつこいよ! これ以上しつこくしたら、ピンセットで一本一本、手作業で丁寧に引っこ抜くよ!?」
「なにをだ!? なにを抜くのだ、えぇ!? ホラ言ってみろ! さあ言ってみろ!」
「すみませんが、話が決まったのなら一刻も早く移動したいと思うのですが、どなたも異存はございませんね?」
セバスチャンさんが冷静に突っ込んで、あたしとクレーターさんの間の一触即発の空気を救ってくれた。
ちょっと感動的なカンジになったと思ったのに、やっぱり『火』と『水』って相容れないぜ。チッ……。


