「とにかく、消えたふたりの行方を追わねばならん。小浮気からも誰ぞ、ついて来てほしいのじゃが」
「当然、私が行く! この私みずからが水園を探しに行くとも!」
「そ、そんな長様!? なにをおっしゃいますか!?」
お付きの人たちが、自分たちの長の発言に飛び上らんばかりに驚いた。
「お待ちください! そのような危険な御役目は、ぜひ我らにお任せを!」
「いいや! 私が行く! 行くと言ったら行く!」
「長様!」
付き人たちが袂に縋りついて、「どうかお考え直しを」と泣かんばかりに頼み込んでいる。
でもクレーター頭は、止められれば止められるほど意固地になって、自分が行くと主張し続けた。
「今頃、さぞや水園は悩み苦しんでいることだろう! 私が出向いてやらねば!」
固い決意を見せるクレーター頭を、あたしはちょっと呆気にとられながら眺めていた。
いくら自慢の娘の安否が心配とはいえ、まさか、これほどの上位一族の長が、みずからお出ましなんて。
普通では考えられない。一国のお殿様が、危険なダンジョン攻略に個人で参加表明するようなものだもの。
「よっぱど水園さんが可愛いんだねぇ……」
思わず漏らしたつぶやきを聞いた付き人さんが、小さな声で返事をしてくれた。
「無理もない。長様にとって水園様は、たったひとり残された家族なのだ」
その悲しみと同情のこもった声に、あたしは戸惑う。
たったひとり、残された家族……?
なにその、たいそう重みのある言葉は。気になるじゃん。
「水園様には、お妹君がいらっしゃった。だが、異形との戦いでお命を落とされたのだ」
「そ、そうなの? それはお気の毒に」
「奥方様もすでに亡く、もう長様の親族は、長の地位を虎視眈々と狙っている兄弟以外には水園様だけだ」
「…………」
「ご自分の地位や命よりも、なによりも水園様がお大事なのだ」
「当然、私が行く! この私みずからが水園を探しに行くとも!」
「そ、そんな長様!? なにをおっしゃいますか!?」
お付きの人たちが、自分たちの長の発言に飛び上らんばかりに驚いた。
「お待ちください! そのような危険な御役目は、ぜひ我らにお任せを!」
「いいや! 私が行く! 行くと言ったら行く!」
「長様!」
付き人たちが袂に縋りついて、「どうかお考え直しを」と泣かんばかりに頼み込んでいる。
でもクレーター頭は、止められれば止められるほど意固地になって、自分が行くと主張し続けた。
「今頃、さぞや水園は悩み苦しんでいることだろう! 私が出向いてやらねば!」
固い決意を見せるクレーター頭を、あたしはちょっと呆気にとられながら眺めていた。
いくら自慢の娘の安否が心配とはいえ、まさか、これほどの上位一族の長が、みずからお出ましなんて。
普通では考えられない。一国のお殿様が、危険なダンジョン攻略に個人で参加表明するようなものだもの。
「よっぱど水園さんが可愛いんだねぇ……」
思わず漏らしたつぶやきを聞いた付き人さんが、小さな声で返事をしてくれた。
「無理もない。長様にとって水園様は、たったひとり残された家族なのだ」
その悲しみと同情のこもった声に、あたしは戸惑う。
たったひとり、残された家族……?
なにその、たいそう重みのある言葉は。気になるじゃん。
「水園様には、お妹君がいらっしゃった。だが、異形との戦いでお命を落とされたのだ」
「そ、そうなの? それはお気の毒に」
「奥方様もすでに亡く、もう長様の親族は、長の地位を虎視眈々と狙っている兄弟以外には水園様だけだ」
「…………」
「ご自分の地位や命よりも、なによりも水園様がお大事なのだ」


