神様修行はじめます! 其の五

「よいか、我が子よ。この先なにが起こるか分からぬ。しっかりと気を引き締めるのじゃぞ?」


「にー♪ にー♪ にー♪」


「……まったくもって引き締まっておらぬような気がするのは、我だけか?」


 お気楽そのものの我が子の態度に、絹糸はしかめっ面だ。


 対して子猫ちゃんは、真っ白でフワフワなシッポをピーンと伸ばしてご満悦。


 そのいかにも楽しそうな様子が、見ていてなんとも、こっちの眉尻までヘニョッと下がってしまう。


「しかたないよ。子猫ちゃんにとっては、めったにない外出だもん。嬉しくてしょうがないんだよ」


「ええい、それでも我の子か! 愚か者めが! そんな調子では命を落とすことになるのだぞ!?」


「にー! にー! にぃぃー!」


 危機感ゼロの我が子を案じて、金色の目を吊り上げながら子猫ちゃんを怒鳴りつける絹糸。


 怒られたことに反発して、親によく似た金色の目をやっぱり吊り上げながら、毛をフーッと逆立てる子猫ちゃん。


 親の心、子知らずの図式だ。なーんかデジャヴを感じちゃう。


 こういうシーンを傍から冷静に見てると、ついつい我が身を省みちゃうなぁ。


 お母さん、お父さん。いつもゴメンね? 今後はできるだけ親孝行するよう、善処するよ。


 ……できるだけ、だけど。


「皆様、小浮気一族の長様がお見えになりました」


 セバスチャンさんの声に振り向くと、中庭の向こうから、さっきの人たちと一緒に純白の袴姿の中年男性が、真っ青な顔でワタワタと駆け寄って来る。


 間違いない、あのクレーター頭。小浮気の長さんだ。