ああ、そうか。
いつもは門川君が治癒の術を使って、あたしたちのケガや病気を癒してくれる。
彼がいない今、彼の代わりにサポート役を務めてくれる仲間が必要なんだ。
絹糸の子どもは、まだ子猫で戦闘能力は持っていないけど、その分すごい高度な治癒能力の持ち主だから。
「なにが起こるか分からぬのでな。万全を期して望まねばならぬ」
「でも、そんな何が起こるか分からない所に、子猫ちゃんを連れてっていいの?」
「我の子じゃ。温室に囲い込んで甘やかしてばかりはおられぬ」
「…………」
絹糸は神獣。元々は、異形側の存在だ。
それが門川一族との数奇な因縁によって、あたしたちの仲間として異形と戦ってくれている。
たぶん絹糸はもう、二度と異形の世界には戻れない。死ぬまでこちらの世界で戦い続けていくだろう。
子猫ちゃんの未来は、こちらの世界であたしたちの仲間として生きていくか、異形の世界に戻っていくかの、たぶんどちらかだ。
そしてどちらを選んだにせよ、平穏はない。
神獣の子として生まれた以上、命がけの戦いの日々が待っているだけだ。
「生き抜くすべを身につけさせる良い機会じゃ。ただし誰にも知られぬよう、極秘に連れてこい」
凛とした表情の絹糸を、あたしは黙って見つめていた。
親である絹糸自身が、我が子の命を危険にさらそうとしている。
それはもちろん深い愛情以外のなにものでもないし、神獣としてそれが正しい選択なんだろうけど。
でも……つらくはないかな? 心が苦しくないかな?
絹糸だけじゃない。こちらの世界に生きる人たちは、みんなそんなつらさと、死と背中合わせに生きている。
もちろんそれを受けいれて、自分自身に誇りをもって生きているけれど。
その誇りは時として悲しく、非情だ。
改めてあたしは、こちらの世界と現世との差異を感じていた。
いつもは門川君が治癒の術を使って、あたしたちのケガや病気を癒してくれる。
彼がいない今、彼の代わりにサポート役を務めてくれる仲間が必要なんだ。
絹糸の子どもは、まだ子猫で戦闘能力は持っていないけど、その分すごい高度な治癒能力の持ち主だから。
「なにが起こるか分からぬのでな。万全を期して望まねばならぬ」
「でも、そんな何が起こるか分からない所に、子猫ちゃんを連れてっていいの?」
「我の子じゃ。温室に囲い込んで甘やかしてばかりはおられぬ」
「…………」
絹糸は神獣。元々は、異形側の存在だ。
それが門川一族との数奇な因縁によって、あたしたちの仲間として異形と戦ってくれている。
たぶん絹糸はもう、二度と異形の世界には戻れない。死ぬまでこちらの世界で戦い続けていくだろう。
子猫ちゃんの未来は、こちらの世界であたしたちの仲間として生きていくか、異形の世界に戻っていくかの、たぶんどちらかだ。
そしてどちらを選んだにせよ、平穏はない。
神獣の子として生まれた以上、命がけの戦いの日々が待っているだけだ。
「生き抜くすべを身につけさせる良い機会じゃ。ただし誰にも知られぬよう、極秘に連れてこい」
凛とした表情の絹糸を、あたしは黙って見つめていた。
親である絹糸自身が、我が子の命を危険にさらそうとしている。
それはもちろん深い愛情以外のなにものでもないし、神獣としてそれが正しい選択なんだろうけど。
でも……つらくはないかな? 心が苦しくないかな?
絹糸だけじゃない。こちらの世界に生きる人たちは、みんなそんなつらさと、死と背中合わせに生きている。
もちろんそれを受けいれて、自分自身に誇りをもって生きているけれど。
その誇りは時として悲しく、非情だ。
改めてあたしは、こちらの世界と現世との差異を感じていた。


