「お前たち、くれぐれもこの件はまだ公にするでないぞ? それと、誰にも知られぬように小浮気の長を呼んで来い」


 心細そうな小浮気の人たちに、絹糸が指示を出す。


「我らが極秘に永久たちを探し出す。小浮気一族からも、誰か同行してもらった方がよかろう」


「わ、わかりました。ただいま、すぐに!」


 小浮気の人たちが飛び上るように立ち上がり、揃ってドタバタと騒々しく廊下を駆けて行く。


「こりゃ! 極秘と言うておろうが! そんないかにも『緊急事態発生』っぽい様子を見せるでないわ!」


 絹糸に叱られてビタッと立ち止まり、いかにも不自然な自然さを装いながら、ギクシャク歩き出す。


 はぁ……あれじゃ『隠し事、あります』って看板、首からぶら下げているようなもんだよ。


 動揺してるから無理ないけど、周りにバレちゃうのも時間の問題かもしれない。


「やれやれ、どうにも融通の利かぬ連中じゃの。さて、遥峰よ」


「はい。典雅様をお呼びいたします」


 セバスチャンさんが胸元から白い用紙と細筆を取り出し、その場でサラサラと何かを記入していく。


「絹糸、マロさんを呼ぶの?」


「結界を解かねば、宝物庫の付近には近寄れぬのでな。周囲にそれと悟られぬよう結界を解除するには、あやつが必要じゃ」


「そっか。なるほど」


「ジュエル様、この手紙を早急に、端境一族に届けなければなりません。伝書亀をお呼びくださいませ」


「わかりましたわ! わたくしにお任せあれですわ!」


 胸をドンッと叩いたお岩さんが、すうぅっと大きく大きく息を吸い込み始める。


 それを見たあたしと凍雨くんが、大慌てで両耳をバッと塞いだ。


 うわぁお、ヤベ! 例のヤツ来る来るー!


 両手でメガホンをつくって口元に当てたお岩さんが、胸いっぱいに吸い込んだ息を一気に吐き出し、天に向かって高らかに雄叫んだ。


「アレクサンドロヴィチ三世ちゃあぁぁ~~ん!!」