「さあ! 僕の花嫁! グズグズしないでさっさと僕の隣に来たまえ!」


 とても花嫁に語りかけているとは思えない、ドスの効いた声……。


 イラつき度MAXに達したらしい門川君が、目を吊り上げながら容赦なく檄を飛ばしてくる。


 あの、マジで怖いんですけど。私の花婿さん……。


「は、はぃぃ……!」


 反射的に腰を浮かしたけれど、途端に当主たちの視線がドスドスッと突き刺さってきた。


 当主たちもようやく状況を理解したようで、全員、祟り神みたいな顔してこっちを睨みつけてくる。


 ひぃぃ~!? 祟り神の眼力ロックオン!?


 全身に不気味なアザが浮き上がってきたらどうしよう! 命持っていかれる!


「どうした小娘? 足でも痺れたかの?」


 硬直しているあたしの膝元に、いつの間にか近寄っていた絹糸が、こっちを見上げてノンキな声を出している。


「はよう来い。当主が呼んでおるのじゃぞ? しま子はここで待っておれ」


 門川君のいる高座は、認められた者しか座ることの許されない、神聖で特別な場所だ。


 鬼で異形のしま子は踏み込むことができないから、言われた通りにするしかない。


 あたしは心配そうな表情のしま子を置いてギクシャクと立ち上がり、おっかなビックリ歩き出した。