ほら、もともと塔子さんって、門川乙女会のリーダーだから。


 あの当時ヒマさえあればあたしをイビッてたのって、誰あろう塔子さんなんだよね。


 だからイジメとかイビリとかは彼女の専売特許なのよ。まさにプロフェッショナル。


 その専門分野で彼女に勝負を挑むとか、上位一族の連中も無謀だわ、そりゃ。


 案の定マロさんへの理不尽な攻撃は、ことごとく塔子さんが裏から手を回して返り討ちにしてるらしい。


 すでに余裕の勝利宣言をかましてる塔子さんのたくましい姿を見てると、本当に頼もしい。


「里緒、現世との交流が戻るまで、あたしがあんたの母親代わりになってあげるわ。ひとり育てるのもふたり育てるのも一緒よ」


「い、いや。いいよ、そんな」


 塔子さんが自分のお母さんとか、そんな恐ろしい環境はカンベンしてほしい。


 慌てて首をプルプル横に振るあたしの気も知らず、塔子さんは聖母マリアのように微笑んでいる。


「うふふ、遠慮なんかしないでいいわ。そんなに恥ずかしがっちゃって、可愛い子ねぇ」


 いやべつに、まったく遠慮してるわけでも恥ずかしがってるわけでもないんです。


 最近の塔子さん、やたら母性丸出しであたしに接してくるんだよね。


 どうやら母親予備軍としての本能が、強烈な庇護欲を掻き立てて、自分でも抑えが利かないらしい。


 気持ちは嬉しいんだけど、いきなりそんな聖母顔してホルモン全開でグイグイこられても対処に困るから、やめてくれ。


「さ、照れずに『お母様』と呼んでごらんなさい? うふふふふふ……」


「あ、ほら塔子さん、マロさんが戻ってきたよ!」


 そろそろホントに手に負えなくなってきたところで、タイミングよくマロさんが姿を現した。


 おーい、マロさーん。おたくの奥さん、また暴走し始めてるからなんとかしてくれー。