「里緒、ほんとにどうしたの? 具合でも悪い? まさか事故に遭ったとか?」
「……違う」
どんどん深刻な表情になって問い詰めてくるお母さんに、あたしは首をフルフル振って否定した。
「真美とちょっとケンカしただけだから心配しないで」
「なんだ、そんなことなの?」
あたしの嘘を信じたらしいお母さんは、気の抜けた顔をした。
そして、からかう口調で聞いてくる。
「で? ケンカの原因は? 人生の大先輩であるお母様が相談に乗ってあげましょうか? 特別に格安料金でね」
そう言ってお母さんは、手揉みしながらヘラヘラ笑ってる。
ねぇお母さん。そんなふざけた表情をしていても、あたしには分かるよ。
あたしを元気づけるために、わざと明るく振る舞ってるんだよね。
お母さんはいつもそうだった。
あたしが落ち込んでる時とか、悲しんでいる時とかに限って、ハイテンションでふざけてばかり。
そんなお母さんを見てると、だんだん『人が真剣に悩んでるってのに!』って腹が立ってきてさ。
ふたりでケンカ腰で言い合ってるうちに、いつの間にか、すっかり気持ちが軽くなってるんだ。
今も、泣いてるあたしを励まそうとしてくれてる。一生懸命笑わそうとしてくれてる。
あたしは、こんなにも愛されているんだ。
なのに……。あたしは……。
こんなひどい娘で、ごめんなさい。あたしは、世界一の親不孝者です……。
「お母さん」
「なに?」
「もしもあたしが、お母さんの望まない未来を選ぼうとしたら、どうする?」
あたしはグスグスと鼻を啜りながら、すべてを打ち明けてしまいたい衝動と戦っていた。
どうせ明日にはすべて消えてなくなるのだとしたら、全部しゃべってしまおうか。
しゃべったところで、とても信じてなんかもらえないだろうけれど。
なにひとつ知らないまま、『思い出』という宝物を他人に勝手に奪い取られてしまうなんて、残酷すぎる。
それなら、せめて……。
「……あぁ、なーるほど。そういう事ね?」
唐突なあたしの質問に困惑していたお母さんが、ニヤッと笑った。
「さては進路のことで真美ちゃんとモメたのね? あんたは一緒の大学に進みたいと思ってるのに、真美ちゃんがあんたとは別の進路を望んでるとか、そういう事でしょ?」
ちょっと呆れたような顔をして、お母さんが腕組みをしながら懇々と諭してくる。
「でもそれは仕方のないことでしょ? 誰かの都合に合わせて、自分の大事な未来を決めるもんじゃないわよ。そんなこと、いくら親友だからって強要しちゃダメよ」
「……違う」
どんどん深刻な表情になって問い詰めてくるお母さんに、あたしは首をフルフル振って否定した。
「真美とちょっとケンカしただけだから心配しないで」
「なんだ、そんなことなの?」
あたしの嘘を信じたらしいお母さんは、気の抜けた顔をした。
そして、からかう口調で聞いてくる。
「で? ケンカの原因は? 人生の大先輩であるお母様が相談に乗ってあげましょうか? 特別に格安料金でね」
そう言ってお母さんは、手揉みしながらヘラヘラ笑ってる。
ねぇお母さん。そんなふざけた表情をしていても、あたしには分かるよ。
あたしを元気づけるために、わざと明るく振る舞ってるんだよね。
お母さんはいつもそうだった。
あたしが落ち込んでる時とか、悲しんでいる時とかに限って、ハイテンションでふざけてばかり。
そんなお母さんを見てると、だんだん『人が真剣に悩んでるってのに!』って腹が立ってきてさ。
ふたりでケンカ腰で言い合ってるうちに、いつの間にか、すっかり気持ちが軽くなってるんだ。
今も、泣いてるあたしを励まそうとしてくれてる。一生懸命笑わそうとしてくれてる。
あたしは、こんなにも愛されているんだ。
なのに……。あたしは……。
こんなひどい娘で、ごめんなさい。あたしは、世界一の親不孝者です……。
「お母さん」
「なに?」
「もしもあたしが、お母さんの望まない未来を選ぼうとしたら、どうする?」
あたしはグスグスと鼻を啜りながら、すべてを打ち明けてしまいたい衝動と戦っていた。
どうせ明日にはすべて消えてなくなるのだとしたら、全部しゃべってしまおうか。
しゃべったところで、とても信じてなんかもらえないだろうけれど。
なにひとつ知らないまま、『思い出』という宝物を他人に勝手に奪い取られてしまうなんて、残酷すぎる。
それなら、せめて……。
「……あぁ、なーるほど。そういう事ね?」
唐突なあたしの質問に困惑していたお母さんが、ニヤッと笑った。
「さては進路のことで真美ちゃんとモメたのね? あんたは一緒の大学に進みたいと思ってるのに、真美ちゃんがあんたとは別の進路を望んでるとか、そういう事でしょ?」
ちょっと呆れたような顔をして、お母さんが腕組みをしながら懇々と諭してくる。
「でもそれは仕方のないことでしょ? 誰かの都合に合わせて、自分の大事な未来を決めるもんじゃないわよ。そんなこと、いくら親友だからって強要しちゃダメよ」


