地味男にとって水晶さんは、この世で最も愛しい、ただひとりの人。
その水晶さんに置き去りにされてしまった世界を守ったところで、彼にとってなんの価値がある?
星すら容易に見つけることも叶わぬ、こんな世界を。
でも愛する水晶さんが大切にしていたものを自分の手で守ることこそが、せめてもの愛の証明。
その思いに呪縛されてしまった地味男は愛を捧げ続ける。
永遠に抜け出すことのできない迷宮を彷徨うように、きりも限りも、果てもなく。
水晶さんへの尽きることない深い想いに駆り立てられて。
…………。
楽に、なりたかったんだろうか。
もう重荷から解放されたかったのだろうか。
でも世界を守る行為を止めることは、彼からすれば、水晶さんを愛することを止めてしまうこと。
そんなこと、彼にできるはずもない。
自分では止められないから、あたしたちに止めて欲しかった?
生きている限り続くだろう苦悩から、死をもって解放されることを密かに望んでいたの?
「地味男、あなた……あたしたちに殺されたかったの?」
あたしは、思わず問いかけた。
そんなの悲しすぎるじゃないか。
『どうか殺してくれ』と心の中で悲鳴を上げながら、あたしたちに向かって刃を振りかざしていたなんて。
本当はその刃で、自分の胸を突き刺したかったなんて。
愛する人に置き去りにされ、届かぬ想いを捧げることにも疲れ果て、自分の本当の胸の内は誰にも、何も告げぬまま……
この男は、たったひとりで孤独にまみれて死んでいく。
「そんなの、あんまりだよ」
そう訴えるあたしを見ながら、地味男はそっと自分の口元に人さし指を押し当てて微笑んだ。
『言っても詮無いことならば、それは言わぬが花』
あぁ……。そうか。
そうなんだ。
言ったところでこんなの、誰にも、どうしようもないじゃないか。
だから彼はいつもこんな困ったような顔をして、なにも言わずに泣くのをこらえるしかなかったのか……。
「あんた、バカだよ地味男」
あたしはせめて、そう言うしかなかった。
目の奥が熱くて唇はフルフル震えるし、鼻水がじわじわ垂れてくる。
思いのすべてを口に出して、楽になってしまいたい。
でも、言っても詮無いことならそれは……。
「言わぬが……花……なんだね?」
震える声でそう言ったら、涙がポタリと落ちた。
あたしの涙を見た地味男が、ますます困った顔をして無言で笑ってる。
彼の気持ちを思うあたしは、唇を手で覆って顔を歪めて、やっぱり声を出さずに泣くしかなかった。
その水晶さんに置き去りにされてしまった世界を守ったところで、彼にとってなんの価値がある?
星すら容易に見つけることも叶わぬ、こんな世界を。
でも愛する水晶さんが大切にしていたものを自分の手で守ることこそが、せめてもの愛の証明。
その思いに呪縛されてしまった地味男は愛を捧げ続ける。
永遠に抜け出すことのできない迷宮を彷徨うように、きりも限りも、果てもなく。
水晶さんへの尽きることない深い想いに駆り立てられて。
…………。
楽に、なりたかったんだろうか。
もう重荷から解放されたかったのだろうか。
でも世界を守る行為を止めることは、彼からすれば、水晶さんを愛することを止めてしまうこと。
そんなこと、彼にできるはずもない。
自分では止められないから、あたしたちに止めて欲しかった?
生きている限り続くだろう苦悩から、死をもって解放されることを密かに望んでいたの?
「地味男、あなた……あたしたちに殺されたかったの?」
あたしは、思わず問いかけた。
そんなの悲しすぎるじゃないか。
『どうか殺してくれ』と心の中で悲鳴を上げながら、あたしたちに向かって刃を振りかざしていたなんて。
本当はその刃で、自分の胸を突き刺したかったなんて。
愛する人に置き去りにされ、届かぬ想いを捧げることにも疲れ果て、自分の本当の胸の内は誰にも、何も告げぬまま……
この男は、たったひとりで孤独にまみれて死んでいく。
「そんなの、あんまりだよ」
そう訴えるあたしを見ながら、地味男はそっと自分の口元に人さし指を押し当てて微笑んだ。
『言っても詮無いことならば、それは言わぬが花』
あぁ……。そうか。
そうなんだ。
言ったところでこんなの、誰にも、どうしようもないじゃないか。
だから彼はいつもこんな困ったような顔をして、なにも言わずに泣くのをこらえるしかなかったのか……。
「あんた、バカだよ地味男」
あたしはせめて、そう言うしかなかった。
目の奥が熱くて唇はフルフル震えるし、鼻水がじわじわ垂れてくる。
思いのすべてを口に出して、楽になってしまいたい。
でも、言っても詮無いことならそれは……。
「言わぬが……花……なんだね?」
震える声でそう言ったら、涙がポタリと落ちた。
あたしの涙を見た地味男が、ますます困った顔をして無言で笑ってる。
彼の気持ちを思うあたしは、唇を手で覆って顔を歪めて、やっぱり声を出さずに泣くしかなかった。


