「今度こそ声に出して言わせて下さい! あなたが生け贄になるなんて間違っている! そんなことは間違っているんです!」
水園さんは子どものように激しく泣きじゃくった。
嗚咽の混じった語尾は震えて、なにを言っているのかよく聞き取れない。
それでも顔をグシャグシャにして、涙をボロボロ流して、彼女は叫び続けている。
ずっと言いたくて、でも言えなかった言葉を、全身全霊で叫び続けていた。
「あなたが死んではダメよ! 私が……私が死ぬべきなの!」
「いいえ、それは許しません」
そう答えた地味男の袖口から、一匹の小さなヘビがちょこんと顔を出した。
そして細い糸のようなキバを水園さんの手の甲に突き立てる。
「痛っ!」
不意打ちの痛みを感じた水園さんが、驚いた表情で自分の手を見つめる。
あれほど必死に握りしめていた彼女の両手から、地味男の手がスルリと抜けていった。
「あ……あ……?」
地味男の手を握り直そうとする水園さんの指が、痙攣して動かない。
地面にクタリと横たわった体も、なぜかピクリとも動かなかった。
「その麻痺の毒は一過性です。しばらくすれば動けるようになるので、心配はいりませんよ」
「…………」
どうやら水園さんは声もだせない状態らしく、唇が不自然に震えている。
それでも目で追いすがる彼女に、地味男は異形に引きずられて徐々に遠ざかりながら言った。
「あなたの言う通りだ。誰かが生け贄になる世界なんて間違っている」
そのために、地味男は事を起こした。
水晶さんが『美しい』と言った世界が、本当に美しい物であるように。
誰ひとりとして犠牲にならない世界であるために。
その彼の目の前で水園さんが生け贄になるなんて、絶対に許容できないこと。
「だから水園殿、あなたは生きなさい。私が死ぬから」
水園さんは子どものように激しく泣きじゃくった。
嗚咽の混じった語尾は震えて、なにを言っているのかよく聞き取れない。
それでも顔をグシャグシャにして、涙をボロボロ流して、彼女は叫び続けている。
ずっと言いたくて、でも言えなかった言葉を、全身全霊で叫び続けていた。
「あなたが死んではダメよ! 私が……私が死ぬべきなの!」
「いいえ、それは許しません」
そう答えた地味男の袖口から、一匹の小さなヘビがちょこんと顔を出した。
そして細い糸のようなキバを水園さんの手の甲に突き立てる。
「痛っ!」
不意打ちの痛みを感じた水園さんが、驚いた表情で自分の手を見つめる。
あれほど必死に握りしめていた彼女の両手から、地味男の手がスルリと抜けていった。
「あ……あ……?」
地味男の手を握り直そうとする水園さんの指が、痙攣して動かない。
地面にクタリと横たわった体も、なぜかピクリとも動かなかった。
「その麻痺の毒は一過性です。しばらくすれば動けるようになるので、心配はいりませんよ」
「…………」
どうやら水園さんは声もだせない状態らしく、唇が不自然に震えている。
それでも目で追いすがる彼女に、地味男は異形に引きずられて徐々に遠ざかりながら言った。
「あなたの言う通りだ。誰かが生け贄になる世界なんて間違っている」
そのために、地味男は事を起こした。
水晶さんが『美しい』と言った世界が、本当に美しい物であるように。
誰ひとりとして犠牲にならない世界であるために。
その彼の目の前で水園さんが生け贄になるなんて、絶対に許容できないこと。
「だから水園殿、あなたは生きなさい。私が死ぬから」


