思いがけない彼の本音を聞いて、あたしの心はようやく満たされる。


 なんてイジワルなあたし。なんてちっぽけなあたし。


 見知らぬ誰かの影に嫉妬してくれる彼の心を、こんなに喜んでいるなんて。


 ごめんね……。でも、あたしも、いつも迷子みたいに不安でたまらないの。


 初めての恋だから、まるで目隠しされてるみたいに行く先が分からなくて。


 何度満たされても、見失うようにすぐにカラッポになっちゃう。


 だから不安で不安で、あなたの心に向かって、いつも必死に手を伸ばしているんだよ。


 『好き』の想いを捧げるように、ずっと差し伸べ続けているんだよ……。



 気付けば、閉じた目蓋のまつ毛がじんわり、涙で濡れていた。


 唇を重ねる喜びと、想いの通じ合う幸せと、じきに離ればなれになってしまう悲しみとが、心の中で渦を巻く。


 どうしようもなくて、あたしは泣いていた。


 お互いの心の寂しさを知るあたしたちは、せめてキスをして、手を重ね合うんだ。


 それでも、すべての影が消え去ってしまうことはないけれど……。


 自分の想いを、相手に伝えきることのできないもどかしさをなだめるように、あたしたちは何度も何度もキスをする。



 ねえ門川君、待ってるからね。


 ちゃんと待ってるから、ちゃんと無事に帰ってきてね。


 そしてまた、こうしてあたしにキスをしてね。


 ちゃんと約束してね、門川君…………。