好きだよ、門川君。


 諦めない門川君が好き。仲間を思う門川君が好き。


 いつも最善の努力をする門川君が好き。どんな困難にも怯まない門川君が好き。


 だからあたしは、自分の最高の笑顔で、最高の言葉で、門川君の気持ちを認めたい。


「好き。本当に門川君のこと、大好き」

「天内君……」


 門川君の指が、あたしの髪に触れた。


 とても綺麗だけれど、出会った頃より男らしさを増した指先が、そっとあたしの髪を撫でる。


 彼の指先から、すごく甘い痺れが走って……心臓がドキンと音をたてた。


 あの頃のまま、少しも変わらない澄んだ彼の瞳が、あたしの瞳を見つめてる。


 冬の朝の光みたいな素敵な瞳に射抜かれて、この胸の奥がざわめいて、あたしの心をどうしようもなく揺さぶる。


「僕も、君が好きだ」


 髪を撫でる手に引き寄せられて、ささやき声と一緒に、そっとキスされた。


 唇に、彼の柔らかさと体温を直に感じて、心臓がギュウッて苦しくなる。


 唇を通して伝わってくる、冷たいような温かいような不思議な感覚。


 これはたぶん、門川君だけが持つ特別な感覚。


 そしてこの世界中で、あたしだけが知っている感触。


 ……もう何度も与えられてるのに、いつまでも慣れなくて、キスのたびに自分の頬が赤く染まるのがわかるんだ。


 だからいつも、キスが終わるとあたしは目を合わせられなくて、下を向くの。


 赤くなってしまった顔を見られるのが、照れくさくてたまらないから……。


「……今日は、聞かないの?」


 キスの後の沈黙が気まずくて、あたしは「へへっ」と小さく笑いながら、照れ隠しにそう聞いた。


 門川君、キスするときは必ず、『天内君、キスしていいか?』って聞いてくるんだもん。


 そんな風に承諾を求めたりするから、余計に気恥ずかしさが倍増しちゃうのにさ。


 ……でもね、ほんとは……


 そう聞いてくるときの彼の真剣な表情と、少しだけ染まった頬を見るのが、結構、好き……。