それぞれの挨拶を済ませて、後ろ髪を引かれるようにしながら、皆が部屋から出て行った。
絹糸としま子が見送りに出て、部屋にはあたしと門川君のふたりきり。
人払いをしているから本当に誰の気配も無くて、辺りは急に静まり返ってしまう。
シンと落ち着いた空気の中、あたしたちは、なんとなく隣同士でペタンと腰をおろした。
そして対のお人形みたいに並んだまま、ふたりとも、何もしゃべらない。
お互いぼんやりと、畳の目とか床の間の掛け軸なんかを、だまって眺めたりして……。
そんな静かな一刻の間をおいて、ようやく門川君が、ぽつんとあたしの名を呼んだ。
「天内君」
「ん?」
「………」
「……うん」
門川君は何も言わなかったけど、あたしはそう答えた。
「うん、わかってる。わかってるから」
何度もコクコクうなづくあたしを、門川君は真面目な顔してじっと見つめている。
そして思い切ったように、静かに話し始めた。
「これが唯一の手段なんだ」
「うん」
「考えたが、これしか方法がない。この機会を逃せば、水絵巻はまた宝物庫の奥深くだ」
「そだね」
「僕は、出口を見失ってしまったあのふたりに、手を差し伸べたい」
「うん、あたしもだよ」
「半年、どうか待っていてくれ」
「うん。 ……あのね、門川君」
「なんだい?」
「あたし、門川君のこと、好き」
絹糸としま子が見送りに出て、部屋にはあたしと門川君のふたりきり。
人払いをしているから本当に誰の気配も無くて、辺りは急に静まり返ってしまう。
シンと落ち着いた空気の中、あたしたちは、なんとなく隣同士でペタンと腰をおろした。
そして対のお人形みたいに並んだまま、ふたりとも、何もしゃべらない。
お互いぼんやりと、畳の目とか床の間の掛け軸なんかを、だまって眺めたりして……。
そんな静かな一刻の間をおいて、ようやく門川君が、ぽつんとあたしの名を呼んだ。
「天内君」
「ん?」
「………」
「……うん」
門川君は何も言わなかったけど、あたしはそう答えた。
「うん、わかってる。わかってるから」
何度もコクコクうなづくあたしを、門川君は真面目な顔してじっと見つめている。
そして思い切ったように、静かに話し始めた。
「これが唯一の手段なんだ」
「うん」
「考えたが、これしか方法がない。この機会を逃せば、水絵巻はまた宝物庫の奥深くだ」
「そだね」
「僕は、出口を見失ってしまったあのふたりに、手を差し伸べたい」
「うん、あたしもだよ」
「半年、どうか待っていてくれ」
「うん。 ……あのね、門川君」
「なんだい?」
「あたし、門川君のこと、好き」


