神様修行はじめます! 其の五

 あぁ、そうか! 門川君は……


 水絵巻を使って、お岩さんとセバスチャンさんの過去を調べるつもりなんだ!


 常世島の戦いによって信子ババが亡くなってしまい、過去の事情を知っている人は、もういない。


 ふたりが実の兄弟であるかどうかを、調べる手立ては尽きてしまった。


 でも……。


『信子長老以外にも、彼らの真実を探す手段はどこかに必ずあるはずだ』


 あの時、門川君はそう言っていた。


 たしかに水絵巻を使えば、セバスチャンさんのお母さんの過去を見ることができる。


『僕は一度や二度で諦めたりしない』


 彼は自分のその言葉通り、ふたりを救う方法をずっと諦めずに考えていたんだ。


 そうか……

 そうだったんだね! 門川君!

 あたしったら自分勝手なことばっかり考えて、ヘソ曲げちゃってごめんなさい!


 門川君に思いっきし八つ当たりする前に気がついて、よかったー!


「恐らく、すぐにも検分は始まるだろう。しばらく皆と連絡がとれなくなるが、案じることはないよ」


「永久様……」


「大丈夫だ。非常事態が起きたところで、僕は自分の身は自分で守れる」


 力強く断言する彼の言葉に、皆は納得するしかない。


「誰も近づけない状況なのであれば、かえって心配はおじゃりませぬな」


「隔離といっても、門川の敷地内のことじゃ。なにかあれば、すぐに我らが駆けつける」


「そ、そうですよね!? なにも心配ないですよね!?」


 皆が口々に、ことさら明るい口調で話している中……


 セバスチャンさんは無言で、でもすごく複雑な目つきで門川君を見つめている。


 セバスチャンさんは聡いから、きっと気づいているんだ。


 門川君が、自分とお岩さんのために行動を起こそうとしてくれているって。


 門川君の気持ちにすごく感謝してると同時に、本当に申し訳なくも思っているんだろう。


 そして門川君のことを、とてもとても心配している。


 普段は感情を表に見せないセバスチャンさんの、あのつらそうな目を見れば一発でわかる。