炎の舌の数本が、根元をスパッと切り取られたみたいに大元の炎からヒョイと飛び出した。


 そして、まるで大蛇が飛び跳ねるように空中をグネグネと動き回っている。


 な、なにあれ! なんであんな勝手に炎が動いてんの!? おまけにすっごいリズミカル!


 この炎、生きてる! 異形なんだ!


―― ピクン……


 宙を踊っていた炎の大蛇の動きがピタリと停止した。


 ギクッと身を強張らせるあたしの目の前で、また炎たちが不可解な動きを見せる。


 大蛇たちは素早く一カ所に集まり、グルグルと回転し始めた。


 常識ではありえないくらい凄まじい勢いの回転に、目がついていけない。頭の芯がグラッとした瞬間……。


「え!?」


 巨大な炎が、超巨大な『目玉』に変化した。


 その異様なまでの不気味な姿に、あたしは息を止めて硬直してしまう。


 だって目ん玉全体、メッラメラに燃えてるんですけど!


 長さが30メートルはあるだろう大窓よりも、はるかにデッカい炎の目玉が、ギョロギョロしている様子はグロテスクすぎる!


―― ギョロリ……


 その目玉が、こっちを見た。


 燃え盛る炎の視覚にロックオンされて、あたしの背筋がゾッと凍る。


 ひぃぃ~。目と目が合ったこの特別な瞬間、ふたりの間に何かが生まれてしまったらどうしよう~。


―― ニィィッ……


 あたしをロックオンした目玉が、こっちを見たままニンマリと笑って、あたしはフッと気が遠くなりかけた。


 あぁ、予感的中。やっぱりなんか、一方的に何かが生まれちゃったみたいです……。