神様修行はじめます! 其の五

「検分の間は、責任をもって小浮気一族が永久様をお守りするでしょう」


「なにかあれば、自分たちの長の首が飛ぶからの。小浮気も必死になろうて」


「蛟殿がなにかを仕掛けてくるとしても、それは水絵巻を手にしてからだろう。検分の間は心配ないよ」


 それは、そうなのかもしんないけど!


 それ以外にも、いやそれ以上に、半年も会えないって、それちょっと!


 いや、ちょっとどころじゃなく、あたし的にかなりキツイよ……。


「僕自身、今回のことは願ったり叶ったりだ」


「門川君?」


「半年間の隔離など、そんなものは僕にとって苦でもない」


 動揺しまくっているあたとは正反対に、門川君は本当に平然としている。


 あたり前みたいなその顔を見たら、胸がチリッと痛んで、モヤモヤした黒い塊りが心の底の方から浮き上がってきた。


 ……なにさ、門川君、あたしと会えなくなること、ちっとも寂しく感じないの?


 そんなの当主の職務の重さに比べたら、たいしたことには感じない?


 そりゃ、あたしたちの結婚のためにも、必要なことだってわかってるし。


 神の一族の大問題を前にして、こんな女々しい考え、いけないことだってわかってるけどさ。


 でも……好きな人と半年も離れ離れになるのって、普通につらくない? あたしはつらいよ。


 なのになんで門川君は、そんなにも平気なの? ちびっとも寂しくないの? 


 満たされない思いで、胸がキュウゥッと絞られるように痛い。


 つい恨みのこもった目で門川君を睨んだら、彼が、お岩さんとセバスチャンさんの方をじっと見ていることに気づいた。


 その真剣な表情を見たとたん、脳裏に『ある考え』が浮かんで、あたしはハッと息をのんだ。