神様修行はじめます! 其の五

「どちらにしろ、水絵巻は蛟一族に渡さなければならないだろう」


「そうじゃのう。引っ掛かりは覚えるが、長たち全員一致の賛同も得てしもうたでな」


「本当に、余計なときだけバイオリズムがぴったり一致しますわよねぇ。あの連中」


 お岩さんが、しみじみと溜め息をつきながら思案する。


 今日も今日とて彼女は、ド派手なピンクのプリンセスドレス姿があっぱれだ。


 超でっかい鮮やかなブルーの薔薇が、ボンッボンッとドレス中に飾られていて、大胆な個性を主張している。


「なんとか理由をつけて、宝物庫の検分を先延ばしにできませんかしら?」


「ですが小浮気一族の長様にも、ずいぶんとご不便をかけているようです。これ以上のご心労は……」


「そうですわね。あの頭部のささやかな残骸さえ儚く散ることになったら、さすがにお気の毒ですわね」


「そうですか? ボクは逆に一本残らず、引っこ抜きたい衝動にかられますけど。あの残骸見てると」


「んまあ、凍雨さん。それは無慈悲というものですわ」


「だって未練たらしく風にそよいでるより、いっそツルッパゲの方が断然、男らしいですよ! ボクならそうします!」


「お見事な美学ですわ凍雨さん! それでこそ真の男ですわ!」


「ありがとうございます!」


「さて宝物庫の検分となれば、また問題が出てくるのぅ」


 絹糸が、お岩さんと凍雨君の白熱する美学トークをあっさりスルーする。


「また問題? これ以上なんの問題をしょい込まされんの?」


「検分の間、永久は隔離されてしまうんじゃ」


 ……へ? か、隔離?