「それにしても大広間中、大騒ぎになってしまったな」
「まったくじゃ。高座で痴話げんかの末、顔面からスッ転んだ当主など、我の記憶の中でもひとりもおらぬわい」
「……それのことじゃない。常世島の件だよ」
「上位一族だけで留まる問題ではありませんから。どの一族も、可能性が皆無とは申せませんので」
漆黒の執事服と、白手袋を身につけた美貌の青年が、大きくうなづきながら同意する。
うん。実際、権田原一族だって、信子ババのケースが起きてしまったわけで。
中位だから下位だからといって、他人事では済まない問題なんだ。
「あのう、ボク思うんですけど、地味男の嘘っぱち……って可能性はないんですか?」
凍雨君が、あの男は信用ならないって顔つきをする。
でも門川君がその可能性を否定した。
「常世島の浄火君に連絡をとったよ。蛟一族の調査は、間違いなく行われたそうだ」
「だからって、あの地味男の腹に一物がないとは限らないですよね?」
ナチュラルに『地味男地味男』連発する凍雨君の失礼さ加減には、誰もツッコまない。
あたしが常世島での一件以来、ずっとあの男のことを、悪意を込めて『あの地味男』呼ばわりしてたもんだから。
あたしたちの内輪では完全に、『地味男』が通り名になってしまっていた。
「だがそうなってくると今度は、彼が『水絵巻』の話を持ち出したことが気になるんだよ」
「? どういうことですか?」
「彼が僕たちを騙しているとして、水絵巻を使えば、その嘘がたちどころにバレてしまう」
「あ、そうか」
凍雨君がパカッと口を開けて納得した。
嘘がバレると承知のうえなら、なんで水絵巻のことを自分から言い出したのか。
そこに裏があるのだとしたら、今度はそっちの方が心配になってくる。
嫌な予感がする。またなにかが、起きそうな予感が……。
「まったくじゃ。高座で痴話げんかの末、顔面からスッ転んだ当主など、我の記憶の中でもひとりもおらぬわい」
「……それのことじゃない。常世島の件だよ」
「上位一族だけで留まる問題ではありませんから。どの一族も、可能性が皆無とは申せませんので」
漆黒の執事服と、白手袋を身につけた美貌の青年が、大きくうなづきながら同意する。
うん。実際、権田原一族だって、信子ババのケースが起きてしまったわけで。
中位だから下位だからといって、他人事では済まない問題なんだ。
「あのう、ボク思うんですけど、地味男の嘘っぱち……って可能性はないんですか?」
凍雨君が、あの男は信用ならないって顔つきをする。
でも門川君がその可能性を否定した。
「常世島の浄火君に連絡をとったよ。蛟一族の調査は、間違いなく行われたそうだ」
「だからって、あの地味男の腹に一物がないとは限らないですよね?」
ナチュラルに『地味男地味男』連発する凍雨君の失礼さ加減には、誰もツッコまない。
あたしが常世島での一件以来、ずっとあの男のことを、悪意を込めて『あの地味男』呼ばわりしてたもんだから。
あたしたちの内輪では完全に、『地味男』が通り名になってしまっていた。
「だがそうなってくると今度は、彼が『水絵巻』の話を持ち出したことが気になるんだよ」
「? どういうことですか?」
「彼が僕たちを騙しているとして、水絵巻を使えば、その嘘がたちどころにバレてしまう」
「あ、そうか」
凍雨君がパカッと口を開けて納得した。
嘘がバレると承知のうえなら、なんで水絵巻のことを自分から言い出したのか。
そこに裏があるのだとしたら、今度はそっちの方が心配になってくる。
嫌な予感がする。またなにかが、起きそうな予感が……。


