神様修行はじめます! 其の五

 あんたが転移の宝珠を使わなければ、こんなことにはならなかった!


 そもそも、あんたがこんなバカな騒ぎを起こさなきゃ、こんな事態にはならなかったんだ!


 あんたのせいだ! ぜんぶぜんぶ、あんたのせいだ!


「なんであたしとしま子を引き離すようなことするの!? 責任取ってよ!」

「…………」

「責任とって、しま子を返して! 返して! 返せぇ!」


 我を忘れて再び術陣から飛び出そうとしたあたしを、門川君が両腕でガッシリと抱え込んだ。


 あたしの髪に顔をうずめるようにして、あたしの名を呼ぶ。


「天内君……! どうか落ち着いてくれ」


 それでもあたしは、その腕の中でひたすら暴れ回った。


 地味男に飛び掛かって、メチャクチャに殴り倒してやりたい。


「あんたを引き裂いてやる! 噛み千切ってやる! 原形をとどめないほど、ボロボロになるまで叩き潰してやる!」


 まるで心を悪魔に乗っ取られたように、激情を押さえられない。


 口から吐く息が黒く染まりそうなほど、恨みと怒りの怒声を浴びせるあたしの心は、真っ暗な闇に囚われていた。


「うわあぁ! 返せぇぇ! しま子を返せ返せ返せえぇぇ!」


 引っくり返った声で息も切れ切れに怒鳴り散らすあたしを、地味男は黙って見つめている。


 やがて、なにも言わないその唇が、声を出さぬままに小さく動いた。


 地味男の唇の動きを読んだあたしの叫びが、嘘みたいにピタリと停止する。


 だって、地味男の唇は……。


『申し訳ない』


 たしかにそう、つぶやいていたから。


 まさか、謝られるなんて夢にも思っていなかった。


 自分が見たものが信じられず、呆気にとられて脱力していくあたしを見つめる地味男の目は……


 清水のように澄んだ涙で、薄っすらと覆われていた。