あたしは、言葉を失ってしまった。
絹糸の隣に、月を見上げるしま子の幻影が見える。
背中を丸めてポツンと座って、ヒザを抱えて月を見上げている後ろ姿。
なにも言わないその背中が、悲しくてたまらなかった。
……しま子は、何度も何度もそうして月を見上げていたのだろうか?
自分と世界のすべてを失う日を覚悟しながら、恐れ続け、心の中で不安に怯えていたの?
そんな思いを抱えたまま、いつもあたしを守り続け、笑い続けてくれていたのだろうか?
なにも言わずに黙って耐えて。
黙って守って。
黙って笑って。
でも結局、心からの願いは叶わず……
しま子は、行ってしまった……。
「しま子」
思わず差し伸べた手の先の、しま子の背中の幻が、両目に盛り上がった涙のせいで霞んでしまう。
涙が頬を伝って流れ落ち、クリアになった視界の先に、しま子の背中はもう見えなかった。
幻影の醒めた現実の世界は、ただ薄暗い夜の空間と、風にざわめく木々の枝が寂しげに揺れるだけ。
そして、見守るだけでなにも叶えてくれない月が、黒色の空にポカリと浮かんでいた。
「なんで?」
見上げる月が、また両目に盛り上がった涙で霞んで、よく見えない。
涙が崩れ、頬に流れ、アゴから落ちて、また新たな涙が目に浮かぶ。
いくら泣いても、次から次へと涙がとめどなく溢れて、尽きる気配はなかった。
「なんで? なんでよ?」
言葉で言い表せないほどの悲しみ。胸を切り裂かれるような苦しみ。底知れない穴底に突き落とされた絶望。
すべての感情が積乱雲みたいに膨れ上がって心を圧迫する。
出口の見えない感情は、今にも大爆発を起こしてあたしの全身を破裂させてしまいそうだ。
苦しい! 心も体も頭も、なにもかもがどうしようもない激情に翻弄されて、荒れ狂う!
涙に濡れる頬を地味男の方へ向け、悪鬼のように目を吊り上げてあたしは怒鳴った。
「なんで転移の宝珠なんか使ったのよ!?」
絹糸の隣に、月を見上げるしま子の幻影が見える。
背中を丸めてポツンと座って、ヒザを抱えて月を見上げている後ろ姿。
なにも言わないその背中が、悲しくてたまらなかった。
……しま子は、何度も何度もそうして月を見上げていたのだろうか?
自分と世界のすべてを失う日を覚悟しながら、恐れ続け、心の中で不安に怯えていたの?
そんな思いを抱えたまま、いつもあたしを守り続け、笑い続けてくれていたのだろうか?
なにも言わずに黙って耐えて。
黙って守って。
黙って笑って。
でも結局、心からの願いは叶わず……
しま子は、行ってしまった……。
「しま子」
思わず差し伸べた手の先の、しま子の背中の幻が、両目に盛り上がった涙のせいで霞んでしまう。
涙が頬を伝って流れ落ち、クリアになった視界の先に、しま子の背中はもう見えなかった。
幻影の醒めた現実の世界は、ただ薄暗い夜の空間と、風にざわめく木々の枝が寂しげに揺れるだけ。
そして、見守るだけでなにも叶えてくれない月が、黒色の空にポカリと浮かんでいた。
「なんで?」
見上げる月が、また両目に盛り上がった涙で霞んで、よく見えない。
涙が崩れ、頬に流れ、アゴから落ちて、また新たな涙が目に浮かぶ。
いくら泣いても、次から次へと涙がとめどなく溢れて、尽きる気配はなかった。
「なんで? なんでよ?」
言葉で言い表せないほどの悲しみ。胸を切り裂かれるような苦しみ。底知れない穴底に突き落とされた絶望。
すべての感情が積乱雲みたいに膨れ上がって心を圧迫する。
出口の見えない感情は、今にも大爆発を起こしてあたしの全身を破裂させてしまいそうだ。
苦しい! 心も体も頭も、なにもかもがどうしようもない激情に翻弄されて、荒れ狂う!
涙に濡れる頬を地味男の方へ向け、悪鬼のように目を吊り上げてあたしは怒鳴った。
「なんで転移の宝珠なんか使ったのよ!?」


