神様修行はじめます! 其の五

 特に、地味男の足元に置かれている水絵巻の周りが著しい。


 そうか。セバスチャンさんはこの騒ぎに乗じて、地味男から水絵巻を奪い返そうとしていたんだ。


 どうりでこの非常時に、お岩さんの隣に彼がいないと思った。


 あたしを含めた全員、しま子のことで頭がいっぱいだったのに、セバスチャンさんだけは別の視点から物事を見て、行動していた。


 さすがは仲間内で一番の切れ者だ。


 ……と思ったところで、あたしはふと眉間に皺を寄せた。


 セバスチャンさんが転移の宝珠を持っているわけがない。


 とすれば、地味男? 地味男が転移の宝珠を使ったの?


 そういえば、校庭の穴底に現れたとき、コイツは転移の宝珠を使って現れたんだっけ。


「……ちょっと、待ってよ。ねえ」


 静まり返る空気の中で、少しずつあたしの思考が回り始めて、あたしは独り言をつぶやいた。


 地味男が、しま子を転移させたの? どうして? なんの目的で?


 そもそも、しま子はどこに行ってしまったの?


「地味男、あんた、しま子になにしたの?」


 そう問いかける声が震える。地味男がなにを考えているのか分からないのが、すごく怖い。


 言いようのない不安がどんどん膨れ上がっていく。


 得体の知れない心もとなさに、自分の顔が青ざめていくのが自分で分かった。


 ねえ、しま子、どこ? あんた今、どこにいるの?


「ちょっと地味男! しま子をどこに転移させたの!?」


「……あの赤鬼がどこに転移したかは、私にも分かりかねます」


「なにそれ! どういうことよ!?」


 最悪の返事が地味男から返ってきて、あたしの心臓が一気に冷えた。