神様修行はじめます! 其の五

「ひょわあぁぁー!?」

「うわっ!?」


 立ち上がったは良いものの、あたしは前のめりになって、勢いよく倒れ込んでしまった。


 目の前の門川君のヒザの裏に、思いっきりヘッドバッドする態勢で……。


―― ビッダァーーーン!


 不意打ちでヒザかっくんされてしまった門川君は、たまらず体勢を崩し、モロ顔面から板の間に激突。


 うつ伏せで倒れたまま、ピクリとも動かなくなってしまった。


 か、門川君……? 


 ……死んだ?


「と、当主様!? 当主様があぁ!」


 それまで見て見ぬふりをしていた長たちも、さすがにこの現状に血相変えて騒ぎ出す。


「当主様になにをするのだ! この馬鹿娘!」

「ごめん門川君ー! ごめんなさいー!」

「ごめんで済めば役所はいらん!」

「は、早く当主様をお助けせねば!」

「しかし高座は、立ち入り禁止の神聖なる場所だぞ!?」

「袴を引っ張って、当主様を下へ引きずりおろせ!」

「いやそんな無茶な!」

「うあぁぁ~~~~!」

「なんだ!? 今度は赤鬼が咆哮しながら突進してくるぞ!?」

「しま子! こっち来ちゃダメ! あたしは大丈夫だからストップー!」

「わあぁ! 鬼が神聖な高座に踏み込んだあ!」

「もうムチャクチャだ! 早く誰かなんとかしろー!」


 もう、悪夢。集団パニック。


 収拾のつかない大騒動の中心で、あたしは半ベソをかきながら、門川君の頬をペシペシ叩いていた。


 あぁ、門川の歴史に残る、大騒動のきっかけを作ってしまった……。


 門川君、お願い!

 早く目を覚まして、この状況なんとかしてくださいぃー!