「そうだ。君にはとても耐えられない。だから僕がやる」
涙と鼻水をダラダラ垂らして泣きわめくしかないあたしの耳に、ゾッとするほど冷静な声が聞こえて、あたしは息をのむ。
「君にも、仲間の誰にも、そんなことはさせるものか」
無表情の門川君が、近づいてくるしま子から微塵も視線を逸らさず、ゆっくりと両手で印を組んだ。
「すべて、この僕が背負う」
瞬きもしない彼の目は、しま子を凝視し続けている。
彼が見ている物は、彼がこれから犯す『仲間殺し』という罪悪。
門川君は、つらすぎるその罪を自分ひとりで背負おうとしている。
あたしのために。
―― キィ――……ン
眩い術光が彼の指先から放たれ、彼の凛とした表情を真白に照らす。
鬼神を殺すための強烈な力が生じているのが伝わってきた。
背後からは、お岩さんと凍雨くんのすすり泣く声が聞こえる。
術の気が高まり、みるみると力場が形成され、凝縮した霊気の中に痛ましい感情が大きく渦を巻く。
「もはや、これまでじゃ。……しま子よ、我らの手で逝くがよい」
厳かな絹糸の言葉を合図に、門川君の唇が言霊を唱え始めた瞬間……。
「だめえぇぇ――――!」
あたしは、門川君の手を思い切り引き離して印を解いてしまった。
そしてしま子を背後にかばうようにバッと両腕を広げて、門川君と正面切って向かい合う。
「そんなことさせない! あたしがしま子を殺させない! 門川君にも、そんな苦しみは絶対に背負わせないー!」
―― ザンッ……!
背中に、不可思議な衝撃を感じた。
痛みなのか、痒みなのか、熱さなのか、判断のつかない衝撃が首筋から腰にかけて突っ走る。
「……え?」
ポカンと開いたあたしの口から、なぜかダラダラと赤い液体が流れだしてきた。
これ、なに? ……あ、もしかして……血、かな?
なんで?と思った思考がピタリと停止し、薄暗くなった視界がグルリと回る。
背中が流水を浴びたように濡れる感触がして、あたしはその場にグラリと引っくり返った。
ドサッと仰向けに倒れたあたしが、見上げる先には……
鬼の爪を真っ赤に染め、返り血を浴びたしま子が、爛々と光る目であたしを見おろしていた。
涙と鼻水をダラダラ垂らして泣きわめくしかないあたしの耳に、ゾッとするほど冷静な声が聞こえて、あたしは息をのむ。
「君にも、仲間の誰にも、そんなことはさせるものか」
無表情の門川君が、近づいてくるしま子から微塵も視線を逸らさず、ゆっくりと両手で印を組んだ。
「すべて、この僕が背負う」
瞬きもしない彼の目は、しま子を凝視し続けている。
彼が見ている物は、彼がこれから犯す『仲間殺し』という罪悪。
門川君は、つらすぎるその罪を自分ひとりで背負おうとしている。
あたしのために。
―― キィ――……ン
眩い術光が彼の指先から放たれ、彼の凛とした表情を真白に照らす。
鬼神を殺すための強烈な力が生じているのが伝わってきた。
背後からは、お岩さんと凍雨くんのすすり泣く声が聞こえる。
術の気が高まり、みるみると力場が形成され、凝縮した霊気の中に痛ましい感情が大きく渦を巻く。
「もはや、これまでじゃ。……しま子よ、我らの手で逝くがよい」
厳かな絹糸の言葉を合図に、門川君の唇が言霊を唱え始めた瞬間……。
「だめえぇぇ――――!」
あたしは、門川君の手を思い切り引き離して印を解いてしまった。
そしてしま子を背後にかばうようにバッと両腕を広げて、門川君と正面切って向かい合う。
「そんなことさせない! あたしがしま子を殺させない! 門川君にも、そんな苦しみは絶対に背負わせないー!」
―― ザンッ……!
背中に、不可思議な衝撃を感じた。
痛みなのか、痒みなのか、熱さなのか、判断のつかない衝撃が首筋から腰にかけて突っ走る。
「……え?」
ポカンと開いたあたしの口から、なぜかダラダラと赤い液体が流れだしてきた。
これ、なに? ……あ、もしかして……血、かな?
なんで?と思った思考がピタリと停止し、薄暗くなった視界がグルリと回る。
背中が流水を浴びたように濡れる感触がして、あたしはその場にグラリと引っくり返った。
ドサッと仰向けに倒れたあたしが、見上げる先には……
鬼の爪を真っ赤に染め、返り血を浴びたしま子が、爛々と光る目であたしを見おろしていた。


