神様修行はじめます! 其の五

「それは、みんなだって同じ気持ちのはずでしょ!?」


「ならば、しま子の気持ちはどうなる?」


 力を込めて叫ぶあたしに、絹糸が間髪置かずに答える。


 気が昂ぶっているあたしとは正反対に、その声はとても静かだった。


「しま子自身は自我を失った自分が仲間を攻撃してしまうことを、望んでいるとでも思うか?」


「だ、だってそれは……!」


「少なくとも、我ならばそんなことは望まぬ」


 変わってしまったしま子の姿をじっと見たまま、絹糸は淡々と言葉を続けた。


「もしも我が異形に戻ってしまう時が来たら、『その時はお前のその手で我を殺せ』と、永久に伝えておる」


 そんなことを言う絹糸に、あたしは言葉を失った。


 絹糸は『神獣』と呼ばれる貴重な存在とはいえ、結局は異形だ。


 その体内には『バケモノ』の血が濃く流れている。


 人に飼われたライオンみたいなもので、いつかひょっこり本能が顔を出して、人を襲うかもしれない。


 絹糸に限ってそんなことはないと、あたしは心から信じている。でも本人は?


 自分の中に明確に流れている異形の血を、誰よりも日々自覚している本人は?


 ……恐れていたのかもしれない。


 飄々とした態度で、いつも『ほっほ』と楽しげに笑い声をあげながら、内心は怯えていたのかもしれない。


 異形からあたしたちを守りながら、『いつか自分も仲間に牙を剥くかもしれない』と、自分自身を恐れていたのかもしれない。