神様修行はじめます! 其の五

「君は……! だから日頃から正座の練習をしておけと言ったろう! 僕の言う事を聞かないからそうなるのだ!」


 門川君がみるみる目を吊り上げて怒りだして、あたしもついムカッとする。


 ムーッ!? なにその、担任教師みたいな上から目線な物の言い方!


 あたしはね、リベラルな女なのよ! そういう支配者的な発言には、反発しか覚えないタイプなの!


 そっちがそうくるなら、受けて立つからね!?


「エラそうに怒んないでよ! 人にはね、向き不向きってのがあんだから!」


「正座は向き不向きではない! 日々の鍛練とテクニックだ!」


「なにそれ意味わかんないし! あーやだやだ! 自分ができるからって、他人もできて当然と思う、その態度!」


「文句を言わずに早く立ちたまえ! みっともない!」


「だから、立てないって言ってんじゃん! 腰から下がハリケーン通過中なんですー!」


 イーッと歯をむいて怒鳴ってから、ハッと我に返って広間の方を振り向いたら……。


「…………」


 長たち全員、さっきから平伏したまんま固まって、展示人形みたいになっちゃってる。


 ……すっかり忘れてた。この人たちの存在。


 皆さん、すっげー身の置き所なさそう……。


 必死に聞いてないふりしてるみたいだけど、絶対いまの聞いてたよね? よね?


 お辞儀の体勢のまま、他人の痴話ゲンカを聞かされる方にしてみれば、たまったもんじゃないだろうけど。


「もう、いい! 君はずっとそこでそうして、痺れていたまえ!」


「ちょっと! 待ってよ!」


 怒って背中を向けて歩き出した門川君の後を追おうと、あたしも急いで立ち上がった。


―― ビリビリビリィィー!


「ひょえぇーっ!?」


 きた! 雷撃きた! ふくらはぎの筋肉にビリビリーッてきたあ! 


 足全体が、仮死状態ぃぃーー!