神様修行はじめます! 其の五


 しま子の、すべての記憶が消えていく。


 あたしと過ごした大切な日々が、仲間と過ごした大切な日々が、まるで幻影みたいに、簡単に次々と消えていく。


 あんなに……あんなに、確かな物だと思っていたのに。


 こんなにもあっけなく、思い出たちが消えていく……。


 溢れ出る涙の熱さで、両目が溶けてしまいそう。


 泣き喚く声が、このノドを破いてしまいそう。


 悲しくて悲しくて、心が砕け散ってしまいそうだよ!


 しま子があたしを忘れるたびに、あたしの心も壊れていくよ。


 お願い、しま子。大好きなしま子。


 大切な大切な、あたしのしま子。


 どうかもうこれ以上……


「これ以上、あたしを忘れてしまわないで! しま子!」


『ほら、りお、お花』


 全力で叫ぶあたしの耳に、ポツリと聞こえた、優しい声。


 それは最後にたったひとつだけ残っていた、しま子の記憶だった。


 泣いているあたしに一輪の花を差し出す、しま子の手が見える。


 鬼の爪が、小さな花を傷つけてしまわないように、そおっと、そおっと……。



 泣いているあたしが、花を受け取る。


 涙でグシャグシャの頬が、とても嬉しそうに微笑んだ。


 そんなあたしの笑顔を見たしま子の心が、弾けそうなほどの幸せに満ちる。



 あぁ、うれしい……。


 あなたの、えがおが、こんなにうれしい……。


 もう、なにもいらない。


 なあーんにも、いら、ない……。




 微笑むあたしの姿。


 白く霞んで、消えていく。


 小さく、小さく、折りたたまれるように丸まって……。



 そして……




 消えた……。