しま子の、すべての記憶が消えていく。
あたしと過ごした大切な日々が、仲間と過ごした大切な日々が、まるで幻影みたいに、簡単に次々と消えていく。
あんなに……あんなに、確かな物だと思っていたのに。
こんなにもあっけなく、思い出たちが消えていく……。
溢れ出る涙の熱さで、両目が溶けてしまいそう。
泣き喚く声が、このノドを破いてしまいそう。
悲しくて悲しくて、心が砕け散ってしまいそうだよ!
しま子があたしを忘れるたびに、あたしの心も壊れていくよ。
お願い、しま子。大好きなしま子。
大切な大切な、あたしのしま子。
どうかもうこれ以上……
「これ以上、あたしを忘れてしまわないで! しま子!」
『ほら、りお、お花』
全力で叫ぶあたしの耳に、ポツリと聞こえた、優しい声。
それは最後にたったひとつだけ残っていた、しま子の記憶だった。
泣いているあたしに一輪の花を差し出す、しま子の手が見える。
鬼の爪が、小さな花を傷つけてしまわないように、そおっと、そおっと……。
泣いているあたしが、花を受け取る。
涙でグシャグシャの頬が、とても嬉しそうに微笑んだ。
そんなあたしの笑顔を見たしま子の心が、弾けそうなほどの幸せに満ちる。
あぁ、うれしい……。
あなたの、えがおが、こんなにうれしい……。
もう、なにもいらない。
なあーんにも、いら、ない……。
微笑むあたしの姿。
白く霞んで、消えていく。
小さく、小さく、折りたたまれるように丸まって……。
そして……
消えた……。


