神様修行はじめます! 其の五

「しま子!」


 思わず、叫びながら目の前の映像に手を差し伸べてしまった。


 ここに現実のしま子がいないのは分かっているけれど、そうせずにいられない。


 このしま子の幸せな記憶を、失わせちゃいけない!


 でもそんなあたしの願いも空しく、記憶の映像はあっという間に紙屑みたいに小さくなって、儚く消滅してしまった。


「あぁ、しま子の記憶が消えちゃった! どうしよう……!」


 そう叫んだ自分の声に驚いて、あたしはノドに手を当てた。


 いつの間にか、すっかり声が出るようになってる。ついさっきまで、呼吸もままならない状態だったのに。


 あたしの現状と、しま子の記憶が連動している。


 しま子の記憶がひとつ奪われるたびに、あたしの体がどんどんラクになっていってる。


 つまり、あたしを助けるために、しま子は自分の記憶を獏に差し出しているんだ!


「そんなの嫌だ!」


 あたしは首をブンブン横に振って叫んだ。


 あたしがしま子に名前を与えた、あの日。


 それは、あたしとしま子の絆が始まった日だ。


 あたしとの出会いを、新しい世界の始まりとして、しま子は大切に記憶に刻んでくれた。


 ずっとずっと忘れずにいてくれた。


 ……それが、消えちゃった。


 しま子が、あたしのことを『大好き』と感じてくれた、一番最初の記憶が……


 絶対に忘れないはずの大事な思い出が、あたしのせいで消えちゃったよぉ!