「一度、正式に当主様のお墨付きをいただかなければ、我らの役目に支障をきたしまする」
小浮気一族の長さんが、ひどく心細そうな声を出した。
そういえば雛型の事件のとき、門川君、宝物庫のアイテムの出血大サービスしちゃったもんなー。
新しい在庫表みたいなの、作り直さないとダメなんだろうな。
それも出来上がってないのに、『正式な手続きで水絵巻を出せ』って言われても、困るんだろう。
「小浮気の長殿の言う通りだな。まずは先に、しきたりを済ませよう。小浮気殿、手筈は頼んだ」
「は、はい。ですが、かなりの時間を要するかと……」
「それはしかたない。蛟殿、君にはしばしの間、待っていてもらおう」
「承知いたしました」
「皆、時間を取らせた。それでは本日の会議は、これにて終了とする」
凛とした門川君の声に、各一族の長たちがまた一斉にザザッと平伏する。
スックと立ち上がった門川君が、あたしを見おろしながら、周囲に気づかれないような小声で話しかけてきた。
「さあ、君も一緒に退出しよう」
「え? あ、あたしも?」
「そうだ。僕と一緒に、当主専用の出入り口から退出する」
「…………」
「それが『僕の花嫁』としてのアピールになるんだよ。さあ、行こう」
長たち全員の前で?
まるで慎ましい新妻みたいに、門川君の後を一歩下がって、しずしずと退出するの?
そ、それは……。
「ごめん門川君。あたし、できない……」
そう言って萎れるあたしの様子を見た門川君が、怪訝そうに眉間に皺を寄せた。
小浮気一族の長さんが、ひどく心細そうな声を出した。
そういえば雛型の事件のとき、門川君、宝物庫のアイテムの出血大サービスしちゃったもんなー。
新しい在庫表みたいなの、作り直さないとダメなんだろうな。
それも出来上がってないのに、『正式な手続きで水絵巻を出せ』って言われても、困るんだろう。
「小浮気の長殿の言う通りだな。まずは先に、しきたりを済ませよう。小浮気殿、手筈は頼んだ」
「は、はい。ですが、かなりの時間を要するかと……」
「それはしかたない。蛟殿、君にはしばしの間、待っていてもらおう」
「承知いたしました」
「皆、時間を取らせた。それでは本日の会議は、これにて終了とする」
凛とした門川君の声に、各一族の長たちがまた一斉にザザッと平伏する。
スックと立ち上がった門川君が、あたしを見おろしながら、周囲に気づかれないような小声で話しかけてきた。
「さあ、君も一緒に退出しよう」
「え? あ、あたしも?」
「そうだ。僕と一緒に、当主専用の出入り口から退出する」
「…………」
「それが『僕の花嫁』としてのアピールになるんだよ。さあ、行こう」
長たち全員の前で?
まるで慎ましい新妻みたいに、門川君の後を一歩下がって、しずしずと退出するの?
そ、それは……。
「ごめん門川君。あたし、できない……」
そう言って萎れるあたしの様子を見た門川君が、怪訝そうに眉間に皺を寄せた。


