神様修行はじめます! 其の五

「一度、正式に当主様のお墨付きをいただかなければ、我らの役目に支障をきたしまする」


 小浮気一族の長さんが、ひどく心細そうな声を出した。


 そういえば雛型の事件のとき、門川君、宝物庫のアイテムの出血大サービスしちゃったもんなー。


 新しい在庫表みたいなの、作り直さないとダメなんだろうな。


 それも出来上がってないのに、『正式な手続きで水絵巻を出せ』って言われても、困るんだろう。


「小浮気の長殿の言う通りだな。まずは先に、しきたりを済ませよう。小浮気殿、手筈は頼んだ」


「は、はい。ですが、かなりの時間を要するかと……」


「それはしかたない。蛟殿、君にはしばしの間、待っていてもらおう」


「承知いたしました」


「皆、時間を取らせた。それでは本日の会議は、これにて終了とする」


 凛とした門川君の声に、各一族の長たちがまた一斉にザザッと平伏する。


 スックと立ち上がった門川君が、あたしを見おろしながら、周囲に気づかれないような小声で話しかけてきた。


「さあ、君も一緒に退出しよう」


「え? あ、あたしも?」


「そうだ。僕と一緒に、当主専用の出入り口から退出する」


「…………」


「それが『僕の花嫁』としてのアピールになるんだよ。さあ、行こう」


 長たち全員の前で?


 まるで慎ましい新妻みたいに、門川君の後を一歩下がって、しずしずと退出するの?

 そ、それは……。


「ごめん門川君。あたし、できない……」


 そう言って萎れるあたしの様子を見た門川君が、怪訝そうに眉間に皺を寄せた。