―― あぁ、そうだ。それだけでよかったのに。
自分もあのお方も、まともな死に方ができないだろうことくらい、知っていた。
それでも構わなかったのだ。
あのお方とふたり、堕ちるところまで堕ちて、共に非業の最後を遂げられるのならそれで幸せだった。
私がこの世で唯一愛した、決して私を顧みようとせぬあのお方と、共に死ねる日がいつか訪れたなら……
せめて私は救われる。
腐りゆく体を抱え、言語を絶する苦痛に喘ぐ日々を生きていられたのは、ただその願いゆえだった。
なのに、もう、それすらも叶わない。
私の体は無意味に腐って腐って、孤独という蟲に蝕まれ、ほら、今もこうして溶けている。
永遠に、あのお方の隣に眠ることも叶わず、ひとりで……――
『私に救われぬ死を与えたのは、誰だ?』
亡霊の言葉に、あたしはぽつんと答える。
「……あたし」
答えを聞いた亡霊が、また問いかける。
『私の望みを奪い、愛する人を奪い、そしてお前はなにを成し得た?』
「……なにも」
あたしは、なにも成し得ていない。
あれから世界はなにひとつ変わらず、戦いで人は死に、守りたいと願った者さえ守れない。
そして取り残された者たちは苦悶に喘ぎ、天を仰いで恨みの言葉を吐き続け、不幸と悲劇は起き続けている。
あんたの命を奪っておきながら、あたしも、この世も、なにも変わっちゃいないんだよ。
『そうだ。だからお前は、仇花。いかにも希望に満ちた顔で爛漫と咲き誇りながら、結局は実を結ばぬ花なのだ』


