気がつけば、やたらジメジメと湿った空気が肌にまとわりついている。
そして天井のあちこちから落ちる水滴が、『ピチョン……』と寂しい音を周囲に反響させていた。
「ここは……どこ?」
光の射さない薄暗がりの中で、懸命に目を凝らしたら、ゴツゴツした黒い岩壁がずっと先まで続いているのが見えた。
なぜ自分がここにいるのか、ここがどこなのかまったく理解できない。
あれ? あたし、こんな所でなにしてるの?
そもそも……
あたしって誰だっけ……?
暗闇の中で首を傾げるあたしの頭の中は完全に空白で、なにもない。
自分には過去なんかひとつも無くて、今この瞬間に生まれたばかりみたいに、カラッポな気がする。
しばらくそうして立ち止まってボンヤリしているうちに、寂しさも恐怖もなにも感じない頭が、ようやく気がついた。
あぁ、そうだ。
ここは洞窟だ。
出口の見えないトンネルのような洞窟の中を、あたしはずっと歩き続けている途中なんだった。
さあ、休んではいられない。また歩き出さなければ……。
義務感に追い立てられるように、あたしは孤独な世界をノソノソと歩き始めた。
いつから、あたしはこの道を歩き続けていたんだろう。
そしてどこまで行けばいいんだろう。
その答えも出せぬまま、棒のように疲弊した足を引きずりながら延々と歩き続ける。
外界と断絶された闇の中で、押し殺した静寂と、滴る水滴の反響音だけが静かに、そして虚しく耳に響いた。
先の見えない道行きは遠く、息が切れて苦しくてたまらない。
疲弊しきった体はもう限界で、今にも倒れてしまいそうだけど、休むわけにはいかない。
どんなにボロボロになろうと、死ぬほど苦しかろうと、あたしは進み続けなければならない。
なぜなら、あたしの命は………
『そう。お前の命は、私の屍の上に咲いた仇花だ』
滴る水滴と、自分の呼吸の音以外、初めて聞いた声。
ゆっくりと顔を上げると、闇の中に狐の面がポカリと浮かんでいた。
そして天井のあちこちから落ちる水滴が、『ピチョン……』と寂しい音を周囲に反響させていた。
「ここは……どこ?」
光の射さない薄暗がりの中で、懸命に目を凝らしたら、ゴツゴツした黒い岩壁がずっと先まで続いているのが見えた。
なぜ自分がここにいるのか、ここがどこなのかまったく理解できない。
あれ? あたし、こんな所でなにしてるの?
そもそも……
あたしって誰だっけ……?
暗闇の中で首を傾げるあたしの頭の中は完全に空白で、なにもない。
自分には過去なんかひとつも無くて、今この瞬間に生まれたばかりみたいに、カラッポな気がする。
しばらくそうして立ち止まってボンヤリしているうちに、寂しさも恐怖もなにも感じない頭が、ようやく気がついた。
あぁ、そうだ。
ここは洞窟だ。
出口の見えないトンネルのような洞窟の中を、あたしはずっと歩き続けている途中なんだった。
さあ、休んではいられない。また歩き出さなければ……。
義務感に追い立てられるように、あたしは孤独な世界をノソノソと歩き始めた。
いつから、あたしはこの道を歩き続けていたんだろう。
そしてどこまで行けばいいんだろう。
その答えも出せぬまま、棒のように疲弊した足を引きずりながら延々と歩き続ける。
外界と断絶された闇の中で、押し殺した静寂と、滴る水滴の反響音だけが静かに、そして虚しく耳に響いた。
先の見えない道行きは遠く、息が切れて苦しくてたまらない。
疲弊しきった体はもう限界で、今にも倒れてしまいそうだけど、休むわけにはいかない。
どんなにボロボロになろうと、死ぬほど苦しかろうと、あたしは進み続けなければならない。
なぜなら、あたしの命は………
『そう。お前の命は、私の屍の上に咲いた仇花だ』
滴る水滴と、自分の呼吸の音以外、初めて聞いた声。
ゆっくりと顔を上げると、闇の中に狐の面がポカリと浮かんでいた。


