神様修行はじめます! 其の五

 あー、そういや昔、雛型の事件で大混乱が起こったとき……


 凍雨君が宝物庫からアイテムをちょろまかしたら、絹糸が大激怒してたっけ。


 ……まさかそのせいで、責任とって死んでないよね? 小浮気一族の誰かが。


 あのときは大変な非常事態だったからなー。


「小浮気の長殿、なにか問題でもあるのか?」


「宝物庫を管理する一族の長として、当主様に申し上げたき事柄がございます」


「何事だろうか?」


「はい。実は当主様が就任なされてから、まだ一度も宝物庫の検めをおこなっておりませぬ」


 ……宝物庫の、あらため? なんじゃそりゃ?


 キョトンとするあたしの胸元で、絹糸のヒゲがピーンと震えた。


「おお、そういえば、そうじゃったのぅ!」


「ねえ、なんのこと?」


「門川の当主が代替わりしたときに、新たな当主が宝物庫の中を検分するという、昔からのしきたりがあるんじゃよ」


「けんぶん? 在庫チェックみたいなもん?」


「そうじゃ。いやはや、すっかり失念しておったわい」


「門川君が就任してから大事件の連発で、在庫チェックのヒマなんてなかったもんね」


「家宝など、本来よほどの非常事態でもなければ、宝物庫から出すこともないのでな」


 そりゃそうだ。でも鬼ババの奥方は、勝手に自分の部屋に置いてたみたいだけど。


 つくづくムチャなことしてたんだなー。あの人って。


 当時の小浮気一族の当主さん、生きた心地がしなかったろうな。やっぱハゲてたのかな?