うおー、空間全域が熱されてモンッモンしてるー。


「これ以上本格的な夏が到来したら、あたし、身も心もアイスみたいに溶けちゃいそう」


「勝手にあいすにでも、ふらっぺにでもなっておれ。まだ六月じゃろうが、まったく」


「ねぇ、こんなに暑いのは、こっちの世界と現世がリンクしているからなんだよね?」


「うむ。ふたつの世界は完全に隔離されているわけではないからのぅ。天候などは、こちら側も微妙に影響されてしまう」


「やっぱりこっちの側も、昔に比べると気候が変?」


「そうじゃな。そう感じ始めたのは、ほんのつい最近からじゃがな」


 こっちの世界に千年暮らしている絹糸の言う『ほんの最近』が、あたし達のどれくらいなのかは分かんないけど。


 やっぱり変化は着実に現れているんだなぁ。


 地球温暖化は、マジメに世界規模で考えて対策していかなきゃならない問題だよ。うん。


「ところで門川君の仕事って、まだ終わらないの?」


「門川の宝物庫は広いのでな。それでも、さすがに今日の分は終わる頃であろうよ」


「大変だよね。当主の仕事って」


 あたしは盛大にうちわを扇ぎ、軒下に揺れるガラス製の風鈴を眺めながら、溜め息をついた。


 門川君が、門川先祖伝来の家宝を収めている宝物庫の点検作業を始めて、もうだいぶ経つ。


 家宝のチェックを行うのも、当主の大事な役目なんだそうな。


 巻物と現物を照らし合わせるだけの単純作業だけど、なにしろ門川の蔵は、東京ドーム並みに広い!


 家宝の量も種類も多いから、これが一筋縄ではいかない作業量なのだ。


 しかも他の仕事が滞るから、これだけにかかっりきりでもいられないし。


 毎日時間を決めて、ちょっとずつ進めているから、まーアナタこれが時間がかかるのなんのって!


 ……ホントにさ、嫌になるほど時間がかかる大仕事になっちゃうんだよ。